気がついたら今年もあと3ヶ月。年末にむけて多くのクリエイティブが街にあふれてくる時期です。たくさんのクリエイティブを学びつつ、いろんな場所に遊びに行こうと思っています!
それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!
[目次]
世界陸上へ、走り続ける情熱。Hondaの特別CMに込めた想い。

9月13日から9日間にわたって開催される「東京2025世界陸上競技選手権大会」。その開幕を前に、本田技研工業が9月1日に公開した特別CM「走るんだ。何度でも。」が話題を集めています。
映像監督は、数々の話題作を手がけてきた山田智和氏。ひとりのランナーの視点を通じて、アスリートたちの努力と挑戦の軌跡をリレー形式で描いています。「走るんだ。何度でも。」という言葉に、挑戦を続けてきたHonda自身の姿勢も重ね合わせた内容です。
CMは大会中の中継番組や東京メトロ車内でも放映されており、マルチスクリーンを使った映像表現が印象的。企画を手がけた電通の礒部建多氏は、「挫折や仲間との日々、すべての積み重ねが今につながっている。その想いを丁寧に映像で重ねました」と語ります。


Hondaはオフィシャルパートナーとして、環境や安全に配慮した大会運営をサポート。「アスリートの活躍による驚きと感動を最大化する」ことをテーマに掲げ、燃料電池車「CR-V e:FCEV」やEV「N-VAN e:」、ハイブリッド車など約120台を大会車両として提供します。さらに、投てき競技ではEV「Honda 0 SUVプロトタイプ」のミニカーが投てき物を回収するなど、遊び心のある取り組みも予定されています。
テクノロジーと挑戦の精神が交差するHondaらしい表現が、世界陸上の熱気をさらに高めてくれそうです。
リカちゃん、爽健美茶の広報担当に。変わり続ける“ロングセラー”のデザイン。

1994年の発売以来、健康や美容を意識したブレンド茶として愛されてきた「爽健美茶」。
そのロングセラーブランドが、9月8日に大幅リニューアルを迎えました。
新たに「とうもろこしのひげ」を加えた12種類の素材をブレンドし、香ばしく飲みやすい味わいへ。もちろん“無糖・カフェインゼロ”はそのままです。

リニューアルのキーワードは、“BeauteaBlend(ビューティーブレンド)”。
忙しい毎日の中で感じる“ビューティーピンチ”=ちょっとした心と体の渇きを、「内側から潤う時間」に変えていこうという想いが込められています。
パッケージデザインも刷新され、透明感のある球体の水滴の中に植物素材を描いたビジュアルが印象的。美しさと清涼感を両立したデザインに仕上がっています。

そして今回、広報担当として登場したのが…なんと「リカちゃん」。
発売30年を迎えるブランドと、誕生55周年を迎える国民的キャラクターという“長年愛される存在”同士のタッグです。
リカちゃんは公式X(旧Twitter)で日常の一コマとともに商品を紹介するなど、SNSを中心に活動。自身のコメントでは「投稿の内容や衣装も、ブランドイメージに合わせて考えています」と語っています。
ブランド担当者によると、起用のきっかけは「リニューアルを機に“爽健美茶らしさ”を思い出してもらいたい」という思いから。
「時代に合わせて進化を続ける姿がリカちゃんと重なった」と話します。
さらに、俳優・戸田恵梨香さんが出演する新テレビCMもスタート。
YouTubeではリカちゃんによる戸田さんへのインタビュー動画が公開され、SNS上でも話題に。
対象商品のパッケージから応募できるLINEスタンプやプレゼントキャンペーンなど、オンラインとオフラインを横断した展開が進んでいます。
長く愛されてきたブランドが、デザインや発信のかたちを柔軟に変えながら新たな世代とつながっていく——
「爽健美茶」と「リカちゃん」のコラボは、そんな“進化するブランドのあり方”を感じさせてくれます。

「あの頃の勇者たちへ。」BOSS×ドラクエが贈る“感謝”の広告キャンペーン

サントリー食品インターナショナルは「ファミリーコンピュータ版『ドラゴンクエストIII』の世界を支える人、全員数えてみた」というユニークな屋外広告を掲出しました。これは、「ドラゴンクエスト」シリーズとのコラボ商品「BOSSQUEST 辿り着いた深煎り」の発売を記念したもの。東京メトロ新宿駅メトロプロムナードにて掲出されています。
同日には、BOSS担当者が約60時間かけて『ドラゴンクエストIII』に登場するすべてのキャラクターを実際に数え、一人ひとりに感謝を伝えるWebムービーも公開。さらに、渋谷センター街入口には焙煎方法にまつわる屋外広告も展開され、コーヒーの奥深さと“働く人へのエール”をリンクさせています。
企画を手掛けた電通 クリエイティブディレクター・嶋野裕介氏によると、「BOSSとドラクエ、どちらも“働く人を支える”というテーマが根底にある」とのこと。
「かつてドラクエに夢中になった世代が、今では社会の真ん中で働いている。そんな人たちが当時の思い出を重ねながら“ありがとう”を感じられる企画にしたかった」と語ります。


制作チームは“ドラクエ好き”で結成され、ファミコン版の1988年当時の空気感を再現するために、実際のファミコンとソフトを使って撮影を実施。SNSでは、ファミコン風の説明書やキャラクターを数えた実際のエクセルシートまで公開し、ファンの心をくすぐる小ネタの数々が話題を呼んでいます。
懐かしさと遊び心、そしてBOSSらしい“働く人への敬意”が見事に融合した今回のプロジェクト。ドラクエ世代の心を温かく沸かせる広告となりました。
日用品がカルチャーになる。ジップロックが挑む“界隈”発想のデザイン

旭化成ホームプロダクツは、家庭用保存袋「ジップロック」の新たな活用法を探るプロジェクト「ジップロック ありなし国民大調査」をスタートしました。
“食品保存”という定番の使い方を超えて、SNSで話題の20の“界隈”における活用方法を提案し、「あり」か「なし」かをユーザーが投票する参加型キャンペーンです。

https://ziploc-life.jp/arinashi/
背景にあるのは、若年層との新たな接点づくり。担当者は「若い世代に、実際にジップロックを手にとって“使ってみるきっかけ”を届けたい」という想いを語っています。
企画段階では、大学生や新社会人などが思わず“話題にしたくなる”体験を重視して構成。SNS上のリアクションまで見据えたクリエイティブ設計が印象的です。

キャンペーンでは、「推し活界隈」「ガチャ界隈」「子育て界隈」「フェス界隈」など、日常の中で自然に話題が生まれる20の“界隈文化”に着目。保存袋という日用品を、発想しだいでどこまで広げられるか──そんな問いかけのような企画になっています。
企画を担当した電通の吉岡謙一氏は、「SNSでの発話をきっかけに、ジップロックの“丈夫さ”や“使いやすさ”という本来の価値に気づいてもらいたかった」と語ります。
さらに渋谷では、「推し活」「ガチャ」界隈をテーマにしたリアルイベントも開催。参加者がその場でカラーストラップを付けた“ジップロックバッグ”をつくり、持ち帰れる体験型の取り組みとして注目を集めました。
“保存袋”というカテゴリーに新しい風を吹き込む、遊び心とデザイン的視点にあふれたプロジェクトです。
