毎年思うことですが、今年こそはこの夏を越せれなかも。。。と思うくらい暑いです。さて7月で岡山にきて丸3年になります。まだ3年!とびっくりしましたが、なんだかんだで楽しくやれております。
それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!
[目次]
“ジーパン=相棒”という提案。OOHとSNSを掛け合わせたエドウインのブランド施策

ジーンズブランドのEDWIN(エドウイン)がスタートした企業広告キャンペーン「いいジーパン穿こうぜ」。OOH(屋外広告)とSNSを掛け合わせた今回の施策が、ブランドの世界観をどう伝えたのか、注目したい事例です。
キャンペーンでは、JR山手線の各駅をはじめ、渋谷の街中21カ所のポスタースペースや池袋駅のデジタルサイネージなどに広告を掲出。ジーンズならではの魅力や、エドウインのこだわりを、イラストとコピーで表現しています。同時に、SNSでも同じクリエイティブを展開し、オンラインとオフラインの両軸でアプローチしているのが特徴です。


エドウインがジーンズに込める想いは「長く付き合える“相棒”のような存在でありたい」というもの。ブランディング&マーケティングマネージャーの高嶋大輔さんは、今回のキャンペーンについてこう話しています。
「長く履けるジーンズ=長く付き合える相棒であるためには、品質へのこだわりが欠かせません。生産現場では、日々の改善や設備開発を続ける一方で、高い生産性によって価値ある価格での提供を目指しています。そんなエドウインのジーンズ――いや、ここでは“ジーパン”と呼びたくなるような存在――のこだわりを、もっと多くの方に知っていただきたくて、このキャンペーンを企画しました」。
今回の広告でOOHを積極的に活用した背景には、「クリエイティブの視認性の高さ」があったとのこと。
「SNSやWebだけでは伝えきれない存在感を、OOHなら持たせることができます。街中での視認性を活かしながら、SNSと組み合わせることで話題性の拡散にもつながると考えました」(高嶋さん)

企画・コピーを担当したのは、POOLのコピーライター・林潤一郎さん。「“いいジーパン”という言葉に込めた思い」について、次のように語っています。
「なんでも簡単に手に入って、すぐに手放してしまう時代だからこそ、“これでいいんだっけ?”と立ち止まってもらいたかったんです。いいものを、長く使う。手間も時間もかかるけれど、だからこそ楽しい。ジーンズ、いや“ジーパン”という言葉がぴったりの、そんな相棒との関係を、いろんな角度から描いていきたいと思いました。“久しぶりに育ててみようかな、ジーパン”。そんな気持ちになるきっかけになれたら嬉しいです」
さらに、キャンペーンの一環として「JEANS QUALITY BOOK『いいジーパン穿こうぜ』」も制作。全国の直営店や取扱店で配布されるほか、近くに店舗がない方に向けて、Webサイトでも冊子のダウンロードが可能となっています。
“マナー”をポップに伝える。講談社の『MANGA MANNERS』が目指す広告のあり方

講談社が展開する「MANGA MANNERS」プロジェクトが、広告とコンテンツのかけ合わせとして注目を集めています。
約2カ月間にわたり、東京駅・品川駅・名古屋駅・京都駅・新大阪駅といった東海道新幹線の主要駅で掲出されたこの広告シリーズ。『セーラームーン』『AKIRA』『進撃の巨人』『東京リベンジャーズ』など、世界中で人気のある講談社の17作品が登場し、日本を訪れる外国人観光客に“日本のマナー”を楽しく伝えるというユニークな内容です。

この企画がスタートしたのは2023年秋、成田空港第2ターミナルの入国審査場前に巨大なウェルカムウォールとして掲出された広告がはじまりでした。「日本へようこそ」の一言だけで終わらず、講談社が掲げるパーパス「Inspire Impossible Stories」を体現する“おもしろくて、ためになる”広告を届けたい、という思いから生まれたのが「MANGA MANNERS」です。
日本のマナーは、海外からの旅行者にとっては“ちょっとした壁”になりがちです。言語と同じくらい、文化の違いが旅を難しくする。そんな悩みを解消するために、人気漫画の名シーンにマナーの一言を添える形で、わかりやすく、記憶にも残るコミュニケーションが設計されています。
今回の新幹線エリアでの展開は、大阪・関西万博を見据えて、訪日客の増加を想定したもの。成田空港での反響を踏まえ、新たに6種類のマナーが加わり、全17種の「MANGA MANNERS」としてリニューアルされました。

制作を担当した講談社のコミック営業部・上ケ市亜矢さんは、「単なる企業のPRではなく、実際に“使える広告”であることを意識しました」と話します。今回のクリエイティブでは、特に「漫画キャラに無理やりマナーを言わせているように見せない」ことにこだわったとのこと。原作のコマをそのまま使うのではなく、構図やセリフの意味を再解釈し、マナーとして自然に読めるよう工夫されています。
ネタ出しの苦労については、週刊現代編集部の栗原莞爾さんがこう振り返ります。
「すでにあるコマからメッセージを考えることもあれば、伝えたいマナーから逆算してコマを探すこともありました。チームで何百案も出し合って、バランスよくユーモアと実用性を織り交ぜた構成に仕上げています。キャラクターが“マナー違反してる人”のようにならないように注意しつつ、見た人がクスッと笑える瞬間も大切にしました」

「MANGA MANNERS」は、観光による経済効果の一方で課題視されているオーバーツーリズムやゴミ問題といった社会的背景にも目を向けています。ただ“お願い”をするのではなく、「見たくなる・覚えたくなる」マナー啓発で、外国人も日本人も気持ちよく過ごせる旅を後押しする構成になっています。
広告の掲出に加えて、全17マナーをまとめたリーフレットも配布。訪日客向けに駅構内で配られているほか、帰国後にも日本を思い出してもらえるよう、デザインや表現にこだわった冊子となっています。
「いずれは“この広告を見に日本に行きたい”と思ってもらえるような存在になれたら」と語るのは、営業部次長の田幸志朗さん。フォトスポットになったり、お土産話として話題になったり、そんな“広告のちから”を信じて生まれた今回の取り組みは、広告が社会とつながるためのヒントにあふれています。
“であうにあう”を再解釈。niko and … が仕掛ける、日常に潜む出会いのストーリー

アダストリアが展開するライフスタイルブランド「niko and …(ニコアンド)」が、ブランドの世界観をさらに強く発信する新たなキャンペーンをスタートさせました。俳優の北村匠海さんと清原果耶さんが出演するキャンペーンムービーを、特設サイト・公式YouTubeチャンネル・全国の店舗で公開しています。
今回のプロジェクトは、2016年から使われてきたブランドコンセプト「であうにあう」をより明確に伝えるための取り組み。コピーライターの野澤幸司さんによると、
「ブランドの人格をよりはっきりと伝えるため、ブランドステートメントをあらためて再構築し、それを軸に映像やOOH(屋外広告)などのクリエイティブを展開しました」とのこと。
テーマは、“まさかの出会い”。
動画では、北村さん・清原さんを含む4人の男女が登場し、ある街を舞台にした小さな旅の物語が、思いがけない形でつながっていきます。

印象的なのが、BGMとして流れる奥田民生さんの「さすらい」。この名曲を、永野亮さん・岩崎優也さん・かめがいあやこさん・室田夏海さんの4名がマイクリレー形式で歌い上げ、出会いやつながりのイメージを音楽でも表現しています。
ムービーは15秒で構成された「マチコの旅」「北村の旅」「ミノルの旅」「清原の旅」の4篇に加え、全体をつなげた118秒の「旅のリレー」篇も公開中。どれも、予想通りではない“意外性のある出会い”を通じて、「にあう」を発見するストーリーに仕上がっています。
また、特設サイトでは、アクセスするたびに世界各地の風景がランダムに登場し、訪れる人にちょっとした“偶然の出会い”を体験してもらう仕掛けも。さらに、4月24日からは全国各地の待ち合わせ場所や「niko and …」の店舗に、「◯◯◯であう」というメッセージが掲出され、SNS投稿キャンペーンも展開中です。
「“niko and …=出会いのブランド”というイメージを、より強く持ってもらうことを狙っています。掲出されたビジュアルが『#であうにあう』とともに投稿され、自然と広がり始めています」

リアルな場とデジタルを横断しながら、“出会い”というブランドらしさをじっくり育てていくniko and … の今回のアプローチは、広告とブランディングの関係を考えるうえでも示唆に富んだ事例といえそうです。
放課後の余韻を描く。“マッチ”のOOHが届けたエモーショナルな共感

大塚食品が販売するビタミン炭酸飲料「MATCH(マッチ)」が、OOH広告キャンペーン「家につくまでが、青春。」をスタートさせました。
京成電鉄の船橋駅・上野駅、東武東上線の池袋駅・志木駅など、学生の帰宅導線上に位置する駅を中心に掲出され、放課後の空気感を切り取った印象的なビジュアルが話題を呼んでいます。

「マッチ」はこれまでも、“学生の青春の隣にある飲み物”として親しまれてきた存在。
そんなブランドが今回フォーカスしたのは、青春の中でも「名前のない時間」です。
大塚食品の製品部でマッチを担当する堀内雄大さんは、今回の企画についてこう語っています。
「青春って、部活や告白、体育祭のような眩しい瞬間を思い浮かべがちですが、振り返ると、実はその“後”にある何気ない時間の方が、心に残っていたりすると思うんです。マッチは、そんな“何かの後”にちょうどいい。微炭酸だからこそ、ゴクゴク飲める。そういう飲用シーンを、もっと伝えていきたいと考えました」



そのメッセージを、まさに学生たちがその「後」の時間を過ごしている帰り道で届けるため、OOH広告を展開。ポスターは、部室の風景や放課後の帰路など、学生たちが共感しやすいシーンを切り取ったイラストで構成されており、コピーもあえてシンプルで余白のある表現に仕上げられています。
イラストを担当したのは、SNSで若い世代に人気の「青春bot」さん。投稿も本人のアカウントから行われ、広告とSNSを自然に行き来する仕掛けもポイントです。

クリエイティブを手がけた博報堂のコピーライター・中西亮介さんは、広告づくりの狙いを次のように語ります。
「“マッチ=部活終わりに飲みたくなる飲み物”という文脈を自然に伝えたかったんです。頑張った1日の締めくくりにある、ちょっとゆるんだ時間。そのタイミングにぴったり寄り添う存在として、マッチを思い浮かべてもらえるような表現を目指しました。青春botさんの繊細なイラストの力もあり、学生の間で共感とともに自然に広がっていきました」
OOHとSNSの連動による共感型プロモーションは、情報の“届け方”だけでなく、“伝わり方”を丁寧に設計することで、広告の意味や存在感をより大きくしていきます。
今回の「マッチ」の事例からは、ターゲットの“感情の余白”にそっと寄り添う表現が、ブランドの記憶として残っていく可能性を感じさせてくれます。