_ ON DESIGN KNOWLEDGE

On design knowledge

トレンド

2025.6.2

5月話題になった広告、デザイン、サービスまとめ(2025)

2025.6.2

5月話題になった広告、デザイン、サービスまとめ(2025)

気がついたどんどん気温も高くなり、半袖で過ごし日も多くなってきました。この夏はたるみきったボディをしっかりいじめぬいてやろうと思っています!
それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!

100年目のその先へ。キユーピー“still in progress.”が伝える、変わらない進化の姿勢

2025年に発売100周年を迎えた「キユーピー マヨネーズ」。
その節目に合わせて、キユーピーは記念キャンペーンをスタートし、特設サイトやTVCMを展開しました。CM「時間の旅」篇では、真っ赤なバイクがまっすぐな道を駆け抜け、バイクの後ろにはキユーピー人形が揺れながら乗っています。
細野晴臣さんによるナレーションが静かに流れます。「私は時間の旅の途中にある。still in progress. キユーピー マヨネーズ100年」——。その映像は、まるで過去と未来をつなぐ“道”そのもののように感じられます。
新聞広告では、日経・読売・朝日各紙に15段広告を出稿し、メディアを横断した立体的なコミュニケーションを展開。

この一連のプロジェクトを手がけたのは、ライトパブリシティの営業/プロデューサー・下田大貴さんです。

「最初のご相談は2022年秋、100周年ロゴとスローガンのご依頼でした」と下田さん。
「その際、クライアントから『100年という節目は喜ばしいけれど、これはあくまで通過点。これからも変わらず、商品と真摯に向き合っていきたい』という言葉をいただきました」

そこから生まれたのが、「still in progress. キユーピーマヨネーズ100年。そして、時間は止まらない。」というスローガン。
この「still in progress.」という言葉は、100周年ロゴにも刻まれています。

「時間の旅」篇

スローガン誕生の裏話も印象的です。
「オリエンから1〜2日後、クリエイティブディレクターの秋山晶が『“in progress.”と“still in progress.”、どちらが良いと思う?』と相談してきたのが最初でした。私たちは“still in progress.”を選びましたが、それがそのまま正式採用されたんです。『これまでがそうだったように、これからも進化し続ける』というキユーピーの姿勢が、非常によく表れている言葉だと思います」

「still in progress.」——直訳すれば「いまだ進化の途上にある」。
100年を経てもなお、キユーピーは歩みを止めないという未来への意思が込められています。
CMでもこの想いを、“まっすぐな道”というモチーフで力強く表現しています。

今回のCMでは、長年キユーピーのクリエイティブを手がけてきた秋山晶さんが、あえて少し距離を置いたかたちで関わりました。
その代わり、TUGBOATの川口清勝さん、多田琢さん、麻生哲朗さんといったトップクリエイターとの“ダブルCD体制”で制作を進行。
「秋山のキャリアでも初めての形でしたが、クライアントの即決もあり、企画初期の構想をほぼそのまま映像化することができました」と語られています。

CM公開後は、「カッコいい」「キユーピーらしくないけど、どこかキユーピーらしい」といった声が多数寄せられ、SNSでも話題に。
さらに、続編となるストーリーが4月以降に公開予定であり、全体像がどう展開されるのか、今後も注目が集まります。

「“未来のあたりまえ”をかたちにする。DNPの企業広告『一面!』」

大日本印刷(DNP)が展開している企業広告シリーズ「DNPの一面!」。その最新作として、「高機能マテリアル」篇の放送がスタートしました。
このシリーズは、DNPが取り組む多様な事業の“顔”を、まるで新聞の一面記事のように丁寧に描いていく企業広告です。社員一人ひとりの仕事に焦点を当て、彼らがどのように“未来のあたりまえ”をつくっているのかを伝える構成になっています。

DNP企業広告「浜田石川の高機能マテリアル」篇/DNPの一面!

今回の「高機能マテリアル」篇では、俳優の濱田岳さんがフリーライター役として登場。1990年代からDNPが開発を続けてきた“高機能なフィルム製品”について、高機能マテリアル事業部の浜田正道さんと石川裕之さんに取材する、という内容です。製品のスペックだけでなく、開発の背景やそこに込められた想いまでを深掘りし、DNPが社会に提供している価値を多面的に描いています。
このシリーズは2023年11月にスタートし、第1弾として「メディカル・ヘルスケア」篇と「XRコミュニケーション」篇を公開。第2弾「半導体」篇に続き、今回が第3弾となります。いずれも最先端の分野でDNPが果たしている役割や、現場で奮闘する社員の姿を丁寧に描写している点が印象的です。

なお、テレビCMと連動して、交通広告も展開中。より幅広い層にDNPの取り組みや姿勢を届けるクロスメディア型のコミュニケーション戦略が取られています。

社員一人ひとりの「一面」をフィーチャーするこのシリーズ。広告でありながら企業のリアルな姿勢やビジョンを誠実に伝えている点が、デザインやブランディングに関わる私たちにとっても大きなヒントになります。

届ける広告から、つながる広告へ。みずほの“青い挑戦”キャンペーン

みずほフィナンシャルグループは、2025年読売新聞へ2日間連続で企業広告を出稿しました。
印象的だったのは、紙面を“つなげて読む”ことで一つのメッセージが完成するという構成。1日目は「青い記念日」「すべての青い挑戦に、」というコピー、2日目には「青い声援」「かつてない追い風を。」というコピーがそれぞれ15段で掲載され、2日分を横に並べることで、より深いストーリーが立ち上がる仕掛けになっていました。

この新聞広告は、Mrs. GREEN APPLEとのコラボレーションによるもの。
みずほでは、今年から「すべての青い挑戦に、かつてない追い風を。」をテーマにした新生活キャンペーンを展開しており、TV CMにはMrs. GREEN APPLEの楽曲「ニュー・マイ・ノーマル」を起用。新聞広告もこの流れを汲み、新生活を迎える人々への応援メッセージとして企画されました。

広告が掲載された3月18日は、Mrs. GREEN APPLEが活動を再開した「フェーズ2」の記念日。そして、その楽曲が発表された日でもあります。
ファンにとっては特別なこの日に、みずほからMrs. GREEN APPLEへの「#届けミセスに」という応援の気持ちが新聞紙面で発信されました。
翌19日には、Mrs. GREEN APPLEからファン(JAM’S)へのメッセージ「#届けJAM’Sに」が掲載され、まさにアーティストとファン、そして企業が心を通わせるような二日間となりました。

この施策は、電通・みずほ・クリエイティブチームが「紙面を“伝える”だけで終わらせず、思わず誰かに“伝えたくなる”体験にしたい」という想いから生まれたもの。
実際、18日と19日の紙面を並べて撮影し、SNSに投稿するファンが続出。新聞というアナログメディアが、SNS上での拡散力を得て大きな話題となりました。

紙面では「ニュー・マイ・ノーマル」の歌詞の一部も紹介されており、ファンの感情をより強く刺激。
さらにSNS上では、「青い挑戦っていい言葉」「アーティストへのリスペクトと企業の姿勢が重なってる」といった共感の声が広がり、みずほのブランドメッセージへの理解や好感度アップにもつながっています。

企画を担当したクリエイターは、「広告というよりも、一つの手紙のように想いを届けたい」と話しており、ユーザー発信による「#届けみずほに」というハッシュタグも自然発生。
みずほのX(旧Twitter)公式アカウントはこの2日間で約5.3万件の「いいね」を獲得し、社内外に大きな反響をもたらしました。

企業、アーティスト、ファン、それぞれの“青い挑戦”が共鳴し合った、まさにストーリーのある広告施策。
紙とデジタルをまたいだ設計、メッセージの連続性、そして共感の連鎖。広告の役割が「見るもの」から「参加するもの」へと進化していることを感じさせる、印象深い事例でした。

「Suicaの数だけ、人生がある。」—上京物語で心をつなぐ、JR東日本の新CM

JR東日本が公開したSuicaの新CM「たみちゃんの上京」篇と「鈴木教授のケーキ」篇が、話題を集めています。テレビ放映と同時に公式YouTubeでも公開され、心あたたまるストーリーが多くの共感を呼んでいます。
今回のCMシリーズは、「Suicaの数だけ、人生がある。」という印象的なキャッチコピーのもと展開。
特に注目を集めたのが、「たみちゃんの上京」篇。上京を決意した娘・たみちゃんと、それを見送る父親とのやりとりが描かれています。

「たみちゃんの上京」篇 90秒

駅へ向かうたみちゃんの前に現れた父親が、そっと手渡したのは「東京で便利なSuica」。
「寂しくなった?」と問いかける父に「なってなーい」と明るく応えるたみちゃん。けれども、実は家を出るときすでに涙を流していた——そんな親子のリアルな心の動きが丁寧に表現されています。

このCMについて、クリエイティブディレクターの栗田雅俊さんは、「Suicaを“好きになってもらう”というシンプルな目的からスタートしました」と語っています。
キャッシュレス化が進む今、改めてSuicaに注目を集めたい。そのために選ばれたのが、“モノ”としてのSuicaではなく、“思い出をともにする存在”としてのSuicaの描き方でした。

制作チームは、社内外から「Suicaにまつわる思い出」を募ったそうです。
短期間で集まったエピソードは、どれもグッとくるものばかり。「Suicaがある数だけ、それぞれの人生の物語がある」と感じ、そこから着想を得て、個人のリアルに寄り添うストーリーとして「たみちゃん」篇の構想が固まっていきました。

「鈴木教授のケーキ」篇 90秒

脚本には実話をベースに、あえてフィクションやファンタジーの要素も加えています。
「CMは“嘘”を許容してくれる表現の場。だからこそ、真実と想像が混ざり合う表現が、より人の心に残るのでは」と、監督の泉田岳さんをはじめ、制作陣で議論を重ねながら方向性を探っていったといいます。

出演者にもこだわりがありました。たみちゃん役には早瀬憩さん、鈴木教授役には柄本明さんを起用。
「柄本さんの、ほんの少し目を動かすだけの演技に心を打たれました。小さな所作が伝える感情の力を、改めて感じる現場でした」と栗田さん。

さらに、CMを彩るテーマソングには、矢野顕子さんの名曲「ひとつだけ」を採用。
その歌を担当するのは、国内外で活動するシンガーソングライター・青葉市子さん。
「この楽曲とこの声でSuicaを表現できたのは、本当に幸運だった」と、音楽面でも強い想いが込められています。

放映後、SNSには「自分が上京したときのことを思い出した」「思わず泣いてしまった」といった共感の声が多数投稿され、「ひとつだけ」の選曲にも多くの反応が集まりました。

「ありがたいことに好評をいただき、グラフィック展開も決定。今後は各駅構内にも広告が掲出される予定です」と、関係者も手応えを語ります。

日常に寄り添い、記憶に残る存在としてのSuica。
ただの“交通系IC”にとどまらず、「人生の節目に寄り添うプロダクト」としてのブランドイメージを、見事に表現したキャンペーンでした。

Back all