暑い夏から秋へバトンタッチする9月とは言われていますが、まだまだ暑さは過ぎ去ってくれません。夏の疲れを気にしつつ日々慢心していきます!
それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!
[目次]
にしたんたたんたーん!台詞は「にしたん」のみのCM演出の裏側

にしたんクリニックの新しいテレビCM「取り調べ」篇が、船越英一郎さんと黒木瞳さんの出演で注目を集めていますね。2023年に続く第二弾として、今回のCMは「にしにしにし……」「にしたんたたんたーん!」というユニークな「にしたん」のフレーズで全編が構成されています。このような独特のアプローチは視聴者の記憶に残りやすく、クリニックのブランドイメージを強化する効果が期待できます。
今回お「取り調べ」篇ではCMのサスペンスフルな雰囲気を盛り上げつつ、ユーモラスな要素も加えていることで、視聴者に強い印象を残しています。船越英一郎さんが刑事役で机を叩きながら怒鳴る熱演と、黒木瞳さんが悪役らしくあざ笑う演技が、CM内でのキャラクターの対立を効果的に表現しています。


演出を務めた寺尾学ぶさんは、前作「サスペンスドラマ」篇に続いて、今回も手腕を発揮しています。前作では、事件にまつわるシーンがフラッシュバックする予告編のような構成でしたが、今回は犯人の尋問シーンを中心に据えています。両作品で共通しているのは、火曜サスペンス劇場のオープニングテーマ「にしたん」をフレーズだけで表現したBGMが流れる点です。
寺尾さん自身が「前回はBGMのみで表現しましたが、今回は役者の台詞も加えてさらにパワーアップしました。サスペンスドラマの名俳優とBGMを組み合わせ、一見するとよくあるシーンですが、台詞を『にしたん』のフレーズのみで構成しても、視聴者に意図がしっかりと伝わるよう工夫しました」と述べています。

台詞の「にしたん」には特別な工夫が凝らされています。クリエイティブディレクターの中尾孝年さんと共に、企画段階から台詞のリズムと感情の表現を丹念に練り上げられています。特に船越さんのセリフは、感情の高ぶりを表すために、「お前がやったんだろう」というフレーズをイメージしながら、「ん」のリズム感が強調されるように調整されています。これにより、出演者は感情を爆発させる指示を受けており、その結果、視聴者に強烈な印象を与えることに成功しています。
撮影では、緊張感を演出するためにカメラを固定し、終盤には出演者の表情をクローズアップすることでドラマを盛り上げています。また、黒木さんが白い服を着て背後の窓から差し込む光に照らされるシーンでは、「美しい悪役」としてのイメージを強調。このような細やかな映像作りにより、企画の面白さが一層引き立てられています。
カロリーメイトによる部活生応援ムービー

大塚製薬は、バランス栄養食「カロリーメイト」の部活生応援企画の一環として、新しいWeb動画「TeamMate お前がいなければ、」を公式YouTubeチャンネルで公開しました。今年の動画は、「チームメイト(仲間)」をテーマに掲げ、バスケットボール部員の視点から物語が展開されています。この動画は、スポーツを通じて仲間との絆の重要性を描いており、多くの部活生にとって共感を呼ぶ内容となっています。

大塚製薬は、部活動に取り組む学生たちを応援するために2018年から毎年夏に特別企画を展開しています。この企画は、学生たちが部活を通じて努力し成長する様子に寄り添い、カロリーメイトのブランドイメージを強化しています。
今年のメインコンテンツであるWeb動画「TeamMate お前がいなければ、」は、バスケットボール部員の視点から、チームメイトや周囲の環境を描き出しています。動画では、自主練習、部活動、学校生活を通じて、仲間、友人、ライバルとしてのチームメイトの多面性や、仲間との葛藤や成長が描かれています。
このプロジェクトは、バスケットボール部や野球部、吹奏楽部など多様な部活動に参加する学生へのインタビューから着想を得ています。特に「チームメイトの存在」が如何に重要かが明らかになり、それが企画の核となっています。また、動画には部活での挫折や成長の瞬間がリアルに描写され、多くの学生が共感できる内容となっています。
さらに、動画の楽曲には、シンガーソングライター上野大樹による書き下ろしのテーマソング『景色』が使用されています。加えて、7月17日からは3週連続で週刊少年サンデーに関連グラフィックが掲載され、これはインタビューで得た学生の言葉を基にイラストレーター中島花野氏が描き下ろしたものです。
日本郵政グループの新コミュニケーションが開始

日本郵政はグループ4社を横断する新たなコミュニケーション戦略の一環として、テレビCM「3色の鳥・登場篇」の放映を開始しました。このCMには、「郵便」「貯金」「保険」という日本郵政グループの3つのコア事業を象徴するカラーを纏った新しいアイコン「チッチチ」が登場します。今後、チッチチはグループ全体の広報宣伝活動における共通のアイコンとしても使用される予定です。
「チッチチ」のキャラクターの声は、人気俳優の趣里が担当しており、その魅力的な声がCMの注目度をさらに高めています。この新CMは、日本郵政グループのイメージを一新し、より親しみやすいブランドへと進化させる重要な一歩として位置づけられています。視聴者には、日本郵政の提供する多岐にわたるサービスへの理解を深めるとともに、新しいアイコン「チッチチ」に親しんでもらえることが期待されています。

日本郵政グループは、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の4つの主要な企業で構成されています。2022年度からは、グループ共通のキャッチコピー「進化するぬくもり。」を基に、4社の広告表現を統一し、郵便局を核とした広報・宣伝活動を強化してきました。
最新のコミュニケーション施策は、これまでの取り組みを継続するとともに、2021年に策定された中期経営計画の見直しを踏まえ、2024年5月に公表された2カ年計画「JPビジョン2025+」の実現を後押しする目的で展開されました。この施策は、日本郵政グループと郵便局への期待感を高めるために設計されています。
これらの動きは、日本郵政グループがより効果的な広報・宣伝活動を通じて、サービスの質の向上と顧客満足度の向上を目指す一環として位置づけられています。これにより、グループ全体の統一感を持ちつつ、各社の特色を活かしたコミュニケーションが可能になっています。


新しいキャラクターのチッチチは、グループの三大コア事業である「郵便」「貯金」「保険」を象徴するカラーをまとい、その口癖「チッチッチ」が特徴です。このアイコンは、2万4000局以上の郵便局とデジタルサービスの利便性を象徴し、「いつでもそばにある郵便局」の価値を伝えるために、俯瞰的な視点から設計されました。
広告キャンペーンでは、チッチチが語り手として活用され、新商品やサービスを紹介する際の小さな驚きや発見を伝えます。デザインにおいては、チッチチが「チッチッチ」と鳴く時の動きや表情に、独特の深みと可愛らしさを感じられるように細心の注意を払いました。この新しいアイコンは、グループ各社のイメージ更新の象徴として位置づけられています。
最新のCMでは、「手のひらの郵便局はじまる。」というナレーションと共に、チッチチが様々な場所で登場します。郵便局やアプリ、保険の相談、宅配ボックスなど、日常生活の中で郵便局が果たす多様な役割を示しています。俳優の趣里が声を務めるチッチチは、CM内で軽やかに「チッチッチ」と歌い、視聴者に親しみやすい印象を与えています。

日本郵政グループは、広告戦略をさらに拡大し、新聞広告も掲載しました。この広告では、赤い背景のもと、全身赤色の服を着た趣里とアイコン「チッチチ」が目を引くビジュアルで登場します。広告には、「あらためて、はじめまして。郵便局です。」というメッセージが添えられ、新しいイメージの郵便局を印象づけています。
この新聞広告の掲載は、テレビCMやデジタルキャンペーンと連携し、日本郵政グループの新たなブランドイメージを一層強化するものです。さらに、特設サイトや公式SNSを通じて情報の拡散を進める計画もあり、これらのプラットフォームでグループの多角的な広報活動を展開していく予定です。
漫画『ブルーピリオド』のデッサン広告

『ブルーピリオド』の実写映画公開を記念して、JR上野駅にて特別な広告が展示されています。この広告は、漫画『ブルーピリオド』のキャラクターのイラストと実写版キャストのデッサンが融合されたもので、東京藝術大学の学生が手掛けたデッサンが用いられています。「漫画の世界が現実になっている」と評され、SNSでも大きな話題を呼んでいます。
この広告プロジェクトは、実写映画化に際して、原作の持つ芸術的な感性と情熱を直接視覚的に示すことを目的としています。デッサンは、美大受験を控えるキャラクターたちの挑戦をリアルに再現し、彼らが直面する創造的な試練と情熱を表現しています。特に、東京藝術大学が位置する上野という地の文化的背景を活かし、広告はその地域性と作品のテーマが一致するよう工夫されています。
このような取り組みは、漫画のファンはもちろん、映画の新たな観客に対しても、『ブルーピリオド』の深い世界観に触れる機会を提供し、より多くの人々に作品の魅力を伝える効果的な方法となっています。




企画を手がけた博報堂のアクティベーションプラナー、嶋元司氏は「漫画のキャラクターと実写のキャストをシンクロさせるため、キャストのビジュアルをデッサンで表現しました。」と語ります。彼のアイデアにより、「好きと闘う夏にしよう」というコピーが掲げられ、作品の情熱的なストーリーを体現しています。
この施策はSNSでも大きな反響を呼び、公式アカウントの関連ポストは、合計1.1万のリポスト、16.6万のいいね、1600万以上のインプレッションを記録しています。講談社の出版営業局・出版営業第四部の上ケ市亜矢氏は、「実写映画化は原作コミックにとって一度あるかないかの貴重な機会であり、多くの方に知っていただきたいと企画しました。」と述べています。
さらに、JR上野駅で8月1日から開業した「PLATFORM13」とのタイアップ企画も実施されており、13番線地平ホームの壁面に設置された全17面のプロジェクターを使用した映像体感空間では、オリジナル映像が放映されています。また、駅構内や周辺の商業施設で楽しめる期間限定のスタンプラリーと壁面のオリジナルアートコンテンツも展開されており期間中、訪れる人々に新たな体験を提供しています。
長崎新聞の平和メッセージ、「原爆炸裂からの3秒間」

長崎新聞は、長崎に原爆が投下された日である8月9日に、2020年から「平和企画」として特別な広告を掲載しています。この取り組みは、社会に広く平和の重要性を訴えかけることを目的としており、今年で5回目を迎えました。
この広告キャンペーンは一貫して「想像力を抑止力に」というテーマのもとに制作されています。今年の企画では、30段と15段の大型誌面に加え、7つの5段広告を使用し、「原爆炸裂からの3秒間を想像してもらうための原稿」を掲載しました。これにより、読者に原爆投下の瞬間の壮絶な現実を想像してもらい、平和の尊さを再認識してもらうことが狙いです。

長崎新聞が継続している「平和企画」の広告には、原爆の恐ろしさを現代の読者に伝えるための工夫が凝らされています。特に今年のキャンペーンでは、原子爆弾が長崎市の上空500メートルで炸裂した瞬間を視覚的に表現しています。アートディレクター江波戸李生氏は「もしもいま、新聞を読んでいる自分の頭上で炸裂したら」という想像を促すために、キノコ雲や当時の写真を使用せず、集中線のみで炸裂時の光を表現しました。
30段の広告では、このビジュアルの下に配置されたコピーが、「ピカッ。強烈な閃光。次の瞬間、4000度の熱線がまちを焼き尽くす。かかる時間は、わずか3秒。」と記述し、原爆の直接的な影響を描写しています。この90文字のコピーは、平均して10秒で読める長さに設定されており、クリエイティブディレクター鳥巣智行氏によれば、これは原爆が炸裂してからの実際の破壊が完了するまでの時間を模しています。彼は「文章を読み終わる頃にはまちは焼き尽くされてしまっている。逃げる間もなく、大切な人にさよならを告げる時間もないほどの、わずかな時間に多くの命が奪われた。その恐怖を感じてもらうことを意図しています」と語っています。
一方、15段の広告では、「この3秒を繰り返さないために」というメッセージとともに、炸裂から3秒後に何が起こったかのイメージが掲載されています。これにより、原爆がもたらした破壊の即効性と、平和への願いが強調されています。
長崎新聞のこの取り組みは、読者に原爆の恐ろしさと平和の重要性を再確認させると同時に、未来に向けて平和をどのように守るかを考えるきっかけを提供しています。







さらに5段広告では、原爆炸裂からの時間経過とその影響を具体的に示しています。時間の経過は10秒、8分30秒、1時間、13時間、1ヶ月、10年、そして79年と設定され、それぞれの時点での長崎の状況や被爆者たちの変化が記されています。
長崎新聞の「平和企画」広告シリーズは、長崎大学核兵器廃絶研究センターの特任研究員である林田光弘氏による厳密なファクトチェックを経ています。林田氏は「炸裂の3秒後から79年後の現在まで、原爆の後遺症が今も続いていることを伝えたい」という意図を持ってこのプロジェクトに取り組んだと説明しています。この深い洞察は、広告がただの視覚的表現にとどまらず、教育的な価値を持つことを示しています。
8月9日の朝、この広告を見た多くの人々は、その衝撃的な内容をSNSで共有し、平和への願いをつづっています。長崎新聞はさらに、同社のウェブサイトにおいて平和企画のページを設け、過去の広告とともに最新の広告を掲載しています。これらの広告はPDF形式でダウンロード可能であり、広く公共のアクセスを促しています。
この取り組みは、原爆の瞬間から長期的な影響に至るまでの連続性を理解しやすくするとともに、平和の重要性を再認識する機会を提供しています。長崎新聞の広告は単なる情報伝達の手段ではなく、平和教育と記憶の継承に寄与する貴重な資源となっています。