暖かくなってきて時間が空いた時にはよく散歩をしています。よくよく見ると街にも多くのデザインで溢れています。素敵なデザインを探しながら街を歩くのも新しい驚きがあって楽しいですね。
それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!
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バウムクーヘンの治一郎、「言葉を贈る」手提げのデザイン

食品メーカーのヤタロー(静岡・浜松)が展開するバウムクーヘンブランド「治一郎」は期間限定の紙袋「言葉を贈る手提げ」(無料)の提供を開始しました。正面には白い花が描かれていて、その中央の部分に「感謝の気持ちです」「元気でいてね」「よい春を」などの黄色のメッセージシールを貼って、人に贈ることができます。

シールは全部で8種類あり、購入者が自由にメッセージを書き込める空欄のシールも1枚含まれています。手提げ袋は小さいサイズと大きいサイズの2種類があり、それぞれピンク色と黄緑色で展開されています。商品はサイズに応じた手提げ袋に入れて、シールシートと一緒に提供されます。

デザインと花のイラストはアートディレクターの安藤真理さん(marii)が手がけ、コピーは石本香緒理さん(AO CHAN)が担当しています。治一郎ブランドを担当する長谷川ちひろさんからは、「出会いも別れもあり、人の想いが交差することの多い春に合わせた、言葉を贈ることができるデザインを考えてほしい」と依頼あったそうです。これを受けて、デザインの軸となるコンセプトコピーを石本さんが考え「春にもらった言葉は、ずっと、あたたかい。」から始まり、「ひと言で、ひと味ちがう贈り物。」で締めくくられるコピーを提案しています。石本さんは「購入者にとってきっと一番嬉しいのは、贈り物をあげた相手が喜んでくれる瞬間。そこにフォーカスしました」と語っています。
アートディレクションを担当した安藤さんは、誰かが誰かに「言葉を贈る」というテーマから、左右の花びらの形が向かい合う人の横顔になっている白い花のイラストを制作しています。中央にシールを貼ることで、人から人にメッセージが伝わる様子を表そうと考えたそうです。「花をモチーフにしたのは、誰かへの贈り物の象徴であり、春にぴったりだから」(安藤さん)。切り絵のようなクラフト感のあるイラストに仕上げています。
カップヌードル新CM「ラクサ食べて」

♪~ ラ、ラ、ラ、ラクサ食べてハマるから~と、何度も彼氏に迫る彼女。しかし、エスニックが苦手な彼は、ラクサに対して懐疑的な態度を改めようとしない。何度も「ラクサ食べて」を繰り返すうちに、気がつくと、彼女は角刈り男になっていた…。
こちらはカップヌードルラクサのCMです。軽快でキャッチなー音楽にインパクトがあり中毒性のある映像となっています。このCMの元ネタは『けーたいみしてよ』という楽曲で「けーたいみしてよ feat. はしメロ, maeshima soshi」は、2023年6月に配信開始され、これまでに音楽配信サービスでのストリーミング総再生回数は6億回、SNSでの楽曲総再生回数は50億回を超える、音楽プロジェクト“MAISONdes”のヒット曲の内の1曲です。
CM制作のクリエィティブのメンバーがこの曲にちょうどハマっていて、試しに替え歌の歌詞を乗せてみたところ妙にマッチしたところからこの企画がスタートしたそうです。ただ単に替え歌を作るだけでは面白みに欠けると考えたため、物語を加えることに。その結果、ラクサにどっぷりハマった女性が、カップヌードル型の角刈りの男性に変身するというユニークなストーリーが生まれました。この斬新なアイデアは、CMに独特のフックを提供し、視聴者に強い印象を与えることに成功しています。
その角刈りの男性を演じているのは、お笑いトリオ「ジェラードン」のアタック西本さんです。カップヌードル型の角刈りを表現するのはとても難しく、最終的に西本さんご本人の角刈りだけでなく、角刈りモデルの方を撮影した画像やCGをミックスして作成を行なっています。ちなみに相方のかみちぃさんもこっそり出演されているそうなので、探してみてはいかがでしょうかw。
「AIラップ名刺」がコミュニケーションを変える

名刺交換——それは、どれだけデジタル技術が進歩しても、新たなコミュニケーションツールが誕生しても、一向に変わることがなかったビジネスの“儀式”です。今回、そこに着目してビジネスコミュニケーションのアップデートを試みたのが、博報堂DYホールディングスのグループ横断型の研究開発組織「Creative technology lab beat」から生まれたサービスプロトタイプ「AIラップ名刺 MY PUNCHLINE」(以下、「AIラップ名刺」)です。名刺×AI×ラップという異色の組み合わせで誕生した「AIラップ名刺」が提示する、新たなコミュニケーションの形をご紹介します。
このAIラップ名刺は簡単なプロフィール入力と写真撮影だけで、自分がラップで自己紹介する動画が生成され、「パンチライン(印象的なフレーズ)」を繰り出すサービスとなっています。生成されたラップの歌詞はモーションリリック化し、名刺動画に合成します。2次元コードで読み取ると相手のデジタル名刺を視聴したり保存できる、楽しくてインパクトのある名刺交換を演出しています。
そもそもなぜ名刺とラップを組み合わせたかというと、制作された博報堂のクリエイターがラップが好きといこともあったのですが、ラップには言語表現としての優れた力があり、コミュニケーション能力や伝える力があるのではないかと考察されたからだそうです。
例えばラップに欠かせない“rhyme(ライム)”。韻を踏んで音で遊ぶことで、伝わりやすく、耳馴染みもいいから覚えやすくなる。これは一つの伝播力を高める要因になります。加えて、「AIラップ名刺」の副題にもなっている“punch line(パンチライン)”。いわゆる「印象に残る一節」のことです。心に刺さるフレーズを繰り出すことで、表現したいことをギュッと詰め込むことができます。

もともと博報堂の創造性の研究機関「UNIVERSITY of CREATIVITY」が「AIラッパーシステム」を開発しており、そこにChatGPTを組み合わせることで今回の“AIラップ名刺” が実現しています。以前までは自社で開発した言語モデルと韻のデータベースを組み合わせていたのですが、AIラップ名刺ではChatGPTと韻のデータベースを連携させることで、言葉の意味をかなり正確に理解しているような挙動を行なってくれるそうです。こういった側面から、従来の言語モデルよりも高精度に、プロフィール情報から連想される言葉を使いつつ、ラップらしい歌詞が生成されるとのこと。
例えば趣味を「ゴルフ」と設定すれば、そこから「グリーン」や「バーディ」といった派生した言葉をどんどん出してくれます。「ゴルフが好きです」と言うと味気ないですが、「グリーンの上に描く…」という歌詞表現が生成されることで想像をかきたてられるものになっているのではないでしょうか。
「AIラップ名刺」はまだプロトタイプの段階とのことですが、名刺交換に限らずインナーコミュニケーションや採用広報、イベントでの自己紹介など様々な活用ができるのではないかと想像させます。例えば広告であれば企業とユーザーの間でラップでやり取りできそうな気がしますし、サービスを発展させればラップバトルも出来るのでは。。。今後もこのようなコミュニケーション×AI活用は注目していきたいですね。
赤城乳業「ソフ」CMの裏側

赤城乳業はカップアイス「Sof’」のテレビCM「ソフトクリームバルーン」篇の放映を開始しました。Sof’はソフトクリームの上部に当たる渦巻き状の部分だけが味わえる商品です。2017年春に発売し、今回はリニューアルに合わせたCM となります。「おいしいとこだけ食べたいな~♪」と歌うBGM とともに、団地の原っぱで円形の大きな布を動かす子どもたち。お遊戯会などで用いられるパラバルーンです。布はやがてソフトクリームの形になり、「ソフトクリームの上だけ Sof’」と商品名が流れます。さらに本CM には、もうひとつ視点が異なるバージョンがあります。こちらは変化するバルーンの形を建物の隙間からのぞき見するような映像となっています。

2017 年から同シリーズのディレクターを務めている春企画東京の山口剛平さんによると、Sof’のCM は表現の自由度が毎回高いそうです。これまでも商品特性にちなみ「なぜか上だけおっさんガール」という謎のキャラクターが登場したり、足が生えたアイスクリームが砂漠の中を歩いたりと、斬新な表現が多いCM です。
今回の演出で意識されたのは「後を引くような読後感」。このソフトクリームのバルーンはCG ではなく、本物を用いています。造形担当がパラシュート素材に折り目を付けて撮影用に制作し、24人の子どもたちが練習し広げています。

このCMは1カットで撮影されており、スローモーション技術を用いることで、バルーンの表面が波打つような滑らかな仕上がりを実現しています。さらに、異なる視点を提供するために、もう一つのバージョンでは団地の非常階段からのぞき見るようなアングルを採用しています。このアングルには広角レンズが使われ、客観的でじっくりと観察するような面白さを演出しています。
自由度が高く独創的な企画を現実のものとするには、多大な努力と計画が必要です。リアルタイムでの撮影には、緻密な段取りとある程度の運も関わってきます。全ての要素がしっかりと合わさることで、感動的でユニークな映像が完成し、それが視聴者に強く訴えかけることができるのです。
鎮痛剤EVEが「お守り」ピールオフ広告

エスエス製薬の解熱鎮痛薬ブランド「EVE」が、お守り型のミニポーチがもらえるピールオフ広告を東京メトロ丸ノ内線「新宿駅」メトロプロムナードに提出しました。
こちらの広告は、同ブランドが実施している「お守りEVE」キャンペーンの一環になります。同キャンペーンは、春に新生活をスタートさせるすべての人が、大事なときに起こる痛みに負けることなく、最大限に力を発揮してもらいたいと開始されたものになります。。特設サイト上では、デザインと入れたいメッセージを決めるだけでお守り型ミニポーチを作成することができ、それを大切な人に無料で贈れるようになっています。

ピールオフ広告の「お守り」を剥がすと、その下に新生活を迎える人を応援するメッセージが並んでいます。これらのメッセージは、「この春、新生活に向け新しい一歩を踏み出す大事な人に向け、贈りたい言葉はありますか」という問いに対して、実際に集まったもので、リアルに届いた声ならではの、熱のこもった応援メッセージになっています。

「お守り」の文字の種類は、「活躍守」「集中守」「挑戦守」「本番守」「初心守」「夢叶守」「回復守」「自信守」「余裕守」そして「出会守」の全部で10種類。新しい一歩を踏み出す人それぞれへ向けた思いをあらわしています。
企画を担当したハッピーアワーズ博報堂のプランナー 鈴木祐気さんは「男女雇用機会均等法が制定された1985年に生まれたEVE。約40年にわたり、働く人たちを応援し続けてきました。急な痛みが訪れても力になれる鎮痛剤ブランドとして、この春、新社会人になるみなさんに『どんな時も、力を出しきれますように。』という想いを、エールにして届けたいと考えたそうです。新社会人になる方への応援の言葉と、『お守り』を直接贈り届けるための交通広告ということでしっかりユーザーの気持ちを汲み取った広告で、クラフト部分も素敵ですが企画の面でもとても素晴らしい広告ではないでしょうか。
海の動物が迫るマリンワールド

福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」は、刷新した「かいじゅうアイランド」を周知するため、動物たちを間近で見られるという体験価値を「ズンズンペンギン」「ヌンヌンアザラシ」と表現したプロモーションを展開しました。

今年で開業35周年を迎える福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」は、ペンギンやアザラシなどがいる「かいじゅうアイランド」をリニューアルオープンしました。新エリアとして、360度全方位からアザラシのショーを楽しめる「アイランドステージ」、ケープペンギンが歩く姿を間近で鑑賞できる「ペンギンビーチ」を開設しています。
新エリアによって動物たちをかなり間近で見られるようになりました。もともとペンギンが自由に歩き回る姿が人気で、その特徴を活かして“動物をブランド化”を行いました。歩き迫って来る様子を『ズンズンペンギン』、合わせて『ヌンヌンアザラシ』とネーミングしています。

本企画はオープン前から屋外広告やテレビCM、新聞広告、ラッピングバスなどで展開しました。オープン当日には、来場者にオリジナルステッカーも配布しています。屋外広告は場所ごとのコミュニケーションにこだわり、福岡駅は迫力ある広告ジャックに。駅の通路では歩くたびにペンギンが1匹、3匹、5匹と迫るようになっています。水族館の直通バスが停まる郵便局前には、『水族館までバスだと約40分、ズンズン(ペンギン)だと約9時間 ※すごく頑張った場合』と案内板のようなデザインになっています。


広告のグラフィックは全て撮り下ろしとなっています。あえて動物だけのグラフィックになっていて、陸地の芝生やプールの写真を入れる案もあったそうなのですが、デザインの作為的な感じを出さず、ペンギンの姿がすっと入ってくるように制作されています。
生き物ならではの愛らしさ、シュールさがあって今まで愛されてきた王道感もあり、ズンズンってなんだろう?と不思議な印象もあり奇をてらいすぎないバランスがとても秀逸なデザインだと思います。