9月は、数年ぶりに父母&兄妹夫婦と家族旅行へ行ってきました!
行き先は大阪観光とUSJ。実はUSJに行くのは人生で初めてでした。
想像以上の人の多さに圧倒されて、正直なところかなり疲れましたが(笑)、普段なかなか行かない場所だからこその刺激もあり、「たまにはテーマパークもいいな」と思える楽しい時間になりました。
とはいえ、本当に疲れました……。
そんな9月を過ごしつつ、仕事では今月も気になるデザインや広告、サービスが盛りだくさん。
それでは今月も、話題になったサービスやトレンド、気になったデザインをご紹介していきます!
[目次]
偶然の出会いは何%?「出会いにも、意思を。」ペアーズのユニークな広告施策

恋活・婚活マッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」を運営するエウレカは、6月19日の「ロマンスの日」にあわせ、東京・渋谷で「偶然の出会い実験ステーション」を2日間限定で開設しました。
今回の企画は、「都心で偶然、出身地が同じ人と出会って恋に落ちる確率」を検証するという、ちょっとユニークな実証実験です。あわせて渋谷駅周辺では、「偶然の出会いの確率」をテーマにした屋外広告(OOH)も展開されました。

近年、よく耳にする若者の「恋愛離れ」。しかし、同社が20〜30代を対象に実施した調査では、必ずしも恋愛への関心が薄れているわけではなく、「偶然の出会い」や「自然な出会い」を期待しながら、きっかけを待っている人が多い傾向が見えてきたといいます。
これまでペアーズは、恋愛に積極的な層を中心にコミュニケーションを展開してきましたが、今回注目したのは、恋愛に興味はあっても、なかなか一歩を踏み出せない人たちです。
そこで考えられたのが、理想とする偶然の出会いが、実際にはどれくらいの確率で起こるのかを可視化するというアイデアでした。
企画を担当したエウレカ Brand teamの山本寛之氏によると、想像以上に低い確率を示すことで、偶然を待つだけでなく、自分の意思で恋愛に踏み出してほしいというメッセージを伝えることが狙いだったそうです。
当初はOOH広告のみを予定していましたが、より多くの人の関心を集めるため、リアルイベントも組み合わせた企画へと発展していきました。

広告のテーマとなったのは、誰もが一度は想像したことがありそうな「運命の出会い」です。
事前アンケートで集めた理想の出会い方をもとに、「偶然の出会い13シチュエーション」を制作。「友達の友達にちょうどいい人がいる確率」といった身近なものから、「パンをくわえて走る子と曲がり角でぶつかる確率」という漫画のような展開まで、さまざまなシチュエーションが用意されました。
それぞれの確率の推計を担当したのは、確率計算を得意とする東大卒芸人の藤本淳史氏です。
渋谷駅周辺の12カ所に掲出されたOOH広告では、算出した確率を大きく表示。思わず二度見してしまいそうな数字とともに、「だから 出会いにも、意思を。」というコピーが添えられています。
さらに、掲出場所と広告の内容を関連づけている点も特徴的です。
例えば、ライブハウスの広告枠には、「『今日のセトリ(セットリスト)、良すぎません?』と盛り上がって恋が始まる確率」を掲出。その場所にいる人が、自分自身の体験と重ね合わせられるよう工夫されています。
単に目立つ広告をつくるのではなく、見る場所やタイミングまで考えられたクリエイティブになっています。


一方、渋谷に設置された「偶然の出会い実験ステーション」では、出身地が同じ人と偶然出会って恋に落ちる確率をテーマに、実際の街を使った検証が行われました。
藤本氏が算出した確率は、なんと「26,059分の1」。
実験では、スタッフが自身の出身地を書いたTシャツを着て渋谷の街を歩き、同じ出身地の人から声をかけられた回数やアンケートをもとに検証を実施しました。
スタッフが着用するTシャツには確率をデザインし、実験ステーションも研究施設をイメージした空間に仕上げるなど、細部まで世界観を統一しています。
また、実験ステーションでは来場者を対象に「偶然の出会い」に関するアンケートも実施。回答者にはTシャツがプレゼントされるなど、参加する楽しさも用意されていました。

今回の企画はSNSでも大きな反響を呼び、Xを中心に「偶然の出会いの確率」をテーマにしたクリエイティブが拡散。少なくとも2,500万インプレッションを超える広がりを見せたといいます。
さらに、SNSで広告を知ったことをきっかけに、実際に渋谷の実験ステーションを訪れる人も多く見られたそうです。
投稿には「結局は自分で動かないと始まらない」といった声も寄せられ、ブランドが伝えたかったメッセージへの共感も生まれました。
今回の取り組みで印象的なのは、恋愛に対して積極的になれない人たちの心理を捉え、「偶然の出会い」という身近なテーマを、数字とユーモアで表現している点です。
広告で興味を引き、SNSで話題を広げ、リアルな体験へとつなげる。そして最終的には、恋愛に一歩踏み出すきっかけをつくる。
単にサービスの魅力を伝えるのではなく、生活者の気持ちや行動そのものに働きかける、興味深いプロモーション事例といえそうです。
コカ・コーラが沖縄の文化と融合。地域に愛されるブランドづくり

日本コカ・コーラが全国の飲食店とコラボレーションし、食事とコカ・コーラの新しい楽しみ方を提案する取り組み「Foodmarks」。今年からさらに活動を強化しており、その第一弾として、沖縄県那覇市のフードホール「MAKISHI CARNIVAL」がリニューアルオープンしました。
今回のリニューアルでは、施設の内外装やロゴを一新。コカ・コーラのブランドらしさを活かしながら、沖縄の歴史や文化を取り入れた空間づくりが行われています。

クリエイティブを担当した電通の多々良樹氏は、一時的なキャンペーンで終わらせず、地域に根づく取り組みにしていくためには、地元の歴史やカルチャーと自然に溶け合うことが大切だと話しています。
その考えを象徴するのが、沖縄の伝統文化とコカ・コーラのブランドを掛け合わせたオリジナルキャラクター「ボトルキャップシーサー」です。



電通のアートディレクター、加藤皓之進氏が開発したこのキャラクターは、コカ・コーラを象徴する「コークレッド」を基調に、沖縄らしい明るさや親しみやすさを表現。施設の装飾やさまざまなクリエイティブに展開され、空間全体のシンボルとなっています。
デザインのアイデアは、実際に現地を訪れ、街の雰囲気や文化に触れる中から生まれたものだそうです。
施設が建つ場所は、かつて地元の人々に親しまれていた牧志公設市場の衣料部・雑貨部の跡地。そうした土地の歴史を大切にするため、施設ロゴには市場で使われていた文字をベースにしたデザインが採用されました。
また、施設内のテナントからコカ・コーラに合うメニューを集めたポスターを制作したほか、オリジナルキャラクターを使ったギフトを周辺の飲食店に配布するなど、施設の 外にも取り組みを広げています。

今回の施策について多々良氏は、キャラクター、体験、メディアを一体化させたIP(知的財産)の開発と捉えており、何よりも地域への愛情が重要だと語っています。
そこには、単にコカ・コーラの魅力を発信するだけでなく、飲食店とともに地域を盛り上げ、日本の外食産業を元気にしていきたいという思いが込められています。
実際に地元からは、キャラクターの愛称を募集してほしいという声や、施設の提灯装飾を商店街にも広げてほしいといった声が寄せられているそうです。
今後は、渋谷や大阪でも同様の取り組みが予定されています。

今回の事例で興味深いのは、世界的に知られるコカ・コーラのブランドを前面に押し出すのではなく、その土地ならではの歴史や文化を丁寧に取り入れている点です。
地域の個性とブランドの世界観を融合させ、ロゴやキャラクター、空間デザイン、体験まで一貫して展開することで、地域の人々が親しみを持てる新しい価値を生み出しています。
ブランドの認知を広げるだけでなく、地域とのつながりを育てていく。デザインが持つ可能性を感じさせる、興味深いブランディング事例といえそうです。
高校生の「本気の言葉」が広告に。ポカリスエットが届ける47都道府県の決意ポスター

高校スポーツの祭典「全国高等学校総合体育大会(インターハイ)」が近畿地区を舞台に開幕しました。
大会に先駆けて、大塚製薬は全国47都道府県それぞれの高校生アスリートの言葉を使った「決意ポスター」を公開。選手たちのリアルな想いをデザインに落とし込んだ、印象的なグラフィックを展開しています。

この取り組みは、同社が2024年から実施している「インハイエールプロジェクト」の一環です。インターハイを目指す選手はもちろん、大会を支える高校生や、日々部活動に励む高校生たちにエールを届けることを目的としています。
3年目となる2026年は、「選手の本気の想いを知ってこそ、本気のエールが送れる」という考えのもと、クリエイティブをアップデート。高校生たち自身が発した「決意」の言葉を主役にしたポスターが制作されました。


ポスターの制作にあたり、2026年5月の1カ月間、全国の高校生アスリートから決意のメッセージを募集しました。
すると、想定を上回る1,995件ものメッセージが集まったそうです。
「昨年の雪辱を果たしたい」という力強い誓いから、「勝つのは俺やで」といった地元の方言、そして支えてくれた家族や仲間への感謝まで。その内容は実にさまざまで、一人ひとりの個性や想いが感じられる言葉が集まりました。
今回のポスターでは、そんな高校生たちの飾らない言葉を、紙面いっぱいに広がるタイポグラフィとしてデザインしています。
47都道府県ごとに異なるメッセージがレイアウトされており、選手たちの地元の競技会場やポカリスエットの販売店舗、SNSなどで展開されています。


今回のプロジェクトは、ポスターを掲出するだけでは終わりません。
高校生たちの本気の決意に触れた地域住民やサポーターが、応援メッセージを記入する「エールシール」を制作。そのシールを貼った「エールコップ」を使い、大会会場で選手たちにポカリスエットが提供される仕組みになっています。
高校生の決意が地域の人々に届き、その想いが応援の言葉となって選手たちに返ってくる。
ポスターをきっかけに、選手と地域の人々をつなぐコミュニケーションが生まれるよう設計されています。

今回の広告制作を担当したのは、博報堂、博報堂ケトル、博報堂Gravityなどです。
クリエイティブディレクターを務めた博報堂ケトルの菅野光輝氏によると、企画の出発点となったのは、「選手の本気の想いを知ることで、地域の人々がより心のこもったエールを送れるのではないか」という考えでした。
そこで、大会本番だけでなく、各地で予選が行われる段階からコミュニケーションを開始。地域の人々が日常的に目にする店頭POPなどでも活用しやすいポスターを意識して制作したといいます。
また、集まった1,995件のメッセージには、制作チームがすべて目を通したそうです。
デザインで特に大切にしたのは、高校生たちのリアルな言葉を、できるだけそのままの熱量で伝えること。
余計な装飾を加えるのではなく、言葉そのものを主役にしたシンプルな表現を採用しています。
一方で、それぞれの決意が持つニュアンスに合わせてフォントを工夫。さらに、どの部活動に所属する何年生の言葉なのかが分かるようにすることで、その言葉の背景にある覚悟や重みまで想像できるようにしています。

今回の取り組みで印象的なのは、広告のためにつくられたキャッチコピーではなく、高校生たち自身の言葉をクリエイティブの中心に据えている点です。
一人ひとりの率直な想いや個性を活かしながら、フォントやレイアウトによって視覚的なインパクトを生み出す。そして、その言葉を受け取った人が、今度は応援する側としてプロジェクトに参加できる仕組みも用意されています。
広告を見る人を、単なる受け手で終わらせないところも興味深いポイントです。
デザインが前に出すぎるのではなく、伝えたい想いをより強く、より深く届けるために機能している。
言葉が持つ力と、グラフィックデザインの役割をあらためて感じさせてくれる、魅力的な広告事例といえそうです。
