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2026.9.7

値引きではなく共感で動かす。ファミマ「涙目シール」のデザイン戦略

2026.9.7

値引きではなく共感で動かす。ファミマ「涙目シール」のデザイン戦略

ファミリーマートは、食品ロス削減の取り組みの一環として、消費期限が近い商品に貼付している「涙目シール」のデザインを、フリー素材として無償提供すると発表しました。
この「涙目シール」は、「たすけてください」というメッセージと、少し困った表情のキャラクターが印象的な値下げシールです。2025年3月から全国のファミリーマート店舗で導入され、購入を後押しする効果が確認されています。全国展開によって、年間およそ3,000トンの食品ロス削減が見込まれているそうです。
今回のフリー素材化にあわせて、パンや肉、魚、ケーキなどをモチーフにしたキャラクターバリエーションも追加。ファミリーマート店舗内にとどまらず、社会全体に食品ロス削減の輪を広げていく狙いがあります。

「恥ずかしくない値引き」をデザインする。ファミマ“涙目シール”の挑戦

消費期限が近いおむすびや弁当などの中食商品に値引きシールを貼り、購入を促す取り組み自体は一般的です。一方で、従来の値引き商品に対して「安くなっているものを買うのが少し恥ずかしい」と感じる人がいるのも事実。また、食品ロス削減の呼びかけが、どこか押しつけがましく受け取られてしまうリスクもありました。
そこでファミリーマートは、キャラクターの表情とメッセージを取り入れた新しい値下げシールの実証実験を実施。その結果、導入前と比べて購入率が5ポイント向上した店舗も見られたといいます。
2025年3月から全店での導入が始まると効果はさらに拡大。4月時点の検証では、購入率が10ポイント向上した店舗もあり、4〜9月の中食商品の廃棄量は前年同期比で約5%削減されました。
実際にシールが貼られた商品に対しては、「恥ずかしくなく買える」「思わず“買ってあげなきゃ”と思った」といった声も多く寄せられています。価格訴求ではなく、感情に寄り添うデザインによって行動を後押しした点が、この取り組みの大きな特徴と言えそうです。

(左から)ファミリーマート マーケティング本部の大澤寛之氏、目黒区長の青木英二氏、滋賀県立大学准教授の山田歩氏

評価され、広がる。ファミマ「涙目シール」が社会に開かれた理由

「涙目シール」は、その独創性と社会的意義が高く評価され、「第34回 食品安全安心・環境貢献賞」(主催:日本食糧新聞社)を受賞。さらに、「2025 65th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」では、PR部門でACCゴールド、デザイン部門でACCシルバーを獲得しました。
この取り組みは海外メディアでも紹介され、「キャラクターを通じて共感を生む」という日本ならではのアプローチとして注目を集めています。
こうした成果を受け、ファミリーマートは自社の取り組みにとどめるのではなく、社会全体で食品ロス削減につなげていくため、「涙目シール」をフリー素材として公開することを決めました。
さまざまな業態で使ってもらえるよう、パンや肉、魚、ケーキなどをモチーフにした多彩なバリエーションも用意。ポスターやPOP、シールなど、幅広い用途での活用を想定しています。素材は公式サイトから無償でダウンロードでき、店頭のマルチコピー機で印刷することも可能です。
食品ロス削減は自治体でも関心が高く、東京都では目黒区がこの「涙目シール」に着目。区役所内レストランをはじめ、区内6店舗での導入が始まっています。
青木英二区長は、「食品ロス削減の取り組みにおける、大きな“ブレイクスルー”になるのではないか」とコメント。シールの“涙目”が、いつか“うれしい涙”に変わる日を目指したい、と意気込みを語っています。

ケーキやパンのキャラクターも追加された「涙目シール」

一つひとつの積み重ねが成果に。ファミマecoビジョン2050の現在地

ファミリーマートは、「ファミマecoビジョン2050」を掲げ、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めています。食品ロス削減については、2018年比で2030年に50%、2050年に80%削減することを目標に掲げ、継続的に施策を展開しています。

2025年3月からは、炊飯などの製造工程を見直すことで、品質を保ったまま中食商品の消費可能時間を2時間延長。あわせて冷凍弁当の発売や、余剰食材の利活用にも取り組んでいます。さらに、AIを活用した発注精度の向上や、販売期限が近い商品を対象とした「ファミマのエコ割」など、日々の店舗運営の中で実効性のある施策を積み重ねています。

そのほか、家庭などで食べきれない食品を寄贈してもらう「ファミマフードドライブ」も展開。2021年4月から2025年2月までに、累計400トンを超える食品が寄付されました。
こうした多角的な取り組みの結果、2025年上半期には、食品ロスを2018年比で32.0%削減する成果を上げています。

個々の施策を点で終わらせるのではなく、仕組みとして積み重ねていく。その姿勢こそが、ファミリーマートの食品ロス削減の取り組みを支えているように感じられます。

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