大丸松坂屋百貨店は「百様図(ひゃくようず)」と名付けた新たなビジュアルアイデンティティ(VI)を策定しました。 それにあわせて、大丸は35年ぶり、松坂屋は23年ぶりとなる包材(ショッピングバッグ・包装紙)のデザイン刷新を発表しています。
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多様な個性を、ひとつの思想へ。大丸松坂屋がVIに込めた想い
全国の主要都市に15店舗を展開する同社ですが、いわゆる「本店」を持たないこともあり、各店舗がその街の文化や歴史と深く結びつきながら、それぞれ独自の個性を育んできました。
その一方で、店舗ごとの個性が際立つからこそ、「企業としての統一感が伝わりにくい」という課題もあったといいます。
そこで今回、顧客はもちろん、働く従業員自身にも「会社が目指す姿」を視覚的に共有することを目的に、VIの策定に踏み切りました。
新たなVI「百様図」は、同社が大切にしてきた 「多様な価値観が認め合い、重なり合うことで生まれる豊かさ」 をテーマに制作されています。
各店舗がつないできた歴史、地域ごとの文化、時代の空気感や一瞬の美しさ、そして顧客への心配り。そうした百貨店側の価値観と、訪れる一人ひとりの価値観が重なり合い、美しい調和を生み出していく様子から、「百様(ひゃくよう)」という名前が付けられました。

紙を重ね、思想をかたちに。「百様図」に込められたデザインプロセス
デザインを手がけたのは、日本デザインセンター 三澤デザイン研究室主宰の三澤遥氏。
どこにでもある“紙”という素材を使い、丸と四角、緑と青(ピーコックグリーンとロイヤルブルー)という要素を幾重にも重ねたデザインを考案しました。
丸と緑は大丸、四角と青は松坂屋のシンボルマークをオマージュしたもの。ふたつの屋号が歩んできた歴史を、これからも大切に受け継いでいくという意思が込められています。
三澤氏は制作プロセスについて、次のように語ります。「プロッターというカッティング機械で、実際に紙を丸や四角に切り出し、無数の組み合わせを検証しました。
スケッチを描くのではなく、紙を“動かす”という身体的な作業を重ねながら、1年以上かけてたどり着いたデザインです」
新しい包材には、「百様図」の一部を切り取った図柄が使用されています。
印刷には段ボール印刷などで一般的なフレキソ印刷を採用していますが、細やかな模様をズレなく再現するため、想像以上に高い技術と調整が求められたといいます。


包材の先にあるもの。街の声で伝える「百様図」
また、新包材の使用開始にあわせて、各店舗では「百様図」について伝える手紙の配布も予定されています。その内容は店舗ごとに異なり、それぞれの街ならではの文化や視点が反映されたものになるそうです。
文章を手がけたコピーライターの長瀬香子氏は、「各店舗の従業員の方々が、街づくりの担い手という意識を持って働かれていることがとても印象的でした。街に根を張る百貨店が、その街の“語り手”になることを目指して制作しています」とコメントしています。

紙が重なり、想いがつながる。大丸松坂屋百貨店の新VI「百様図」
なお、「百様図」については特設サイトも公開。 コンセプトや制作背景に加え、紙と紙が重なり合い、ひとつのデザインが立ち上がっていく様子を映像で体感できるコンテンツも用意されています。長い歴史と多様性を、ひとつの“図”として束ねる。大丸松坂屋百貨店の新しいVIは、これからの百貨店の在り方を静かに示す取り組みといえそうです。

