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2026.5.18

4月話題になった広告、デザイン、サービスまとめ(2026)

2026.5.18

4月話題になった広告、デザイン、サービスまとめ(2026)

5月ってこんな暑かった?たぶん毎年言ってます。。。この先のことを考えると絶望しています。
ただ4月に新しいPCを買ってやる気は満々です!たくさん働きたいぜ!

それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!

“忘れたくないこと”を共有する。記憶に寄り添う共感型プロモーション

「あなたの忘れたくないことはなんですか?」
そんな問いかけから始まる今回の取り組みは、森永乳業とソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営するクラダシが共同で実施したものです。「認知症の日」にあわせて、人々の大切な記憶にまつわるエピソードを募集し、集まった声を特設ページや屋外広告で展開しました。
掲出場所は、JR東京駅と京阪・祇園四条駅。1週間にわたり、それぞれの場所にゆかりのあるエピソードが掲出されました。

乳業メーカーである森永乳業が、なぜ“記憶”というテーマに向き合ったのか。その背景には、長年取り組んできた研究があります。同社は50年以上にわたり、腸内細菌やビフィズス菌の研究を続けてきました。近年では、腸と脳の関係性である「脳腸相関」にも注目が集まっています。
本企画を担当した森永乳業の王宗響氏は、「脳の機能のひとつである『記憶』に着目し、おなかと同じように“忘れたくない記憶”も大切にしてほしいという思いからスタートしました」と語ります。研究という企業の強みを起点にしながらも、生活者の感情に寄り添う形で企画が設計されています。
今回のプロジェクトでは、「#忘れたくないこと」をテーマにエピソードを募集。生活者自身が参加し、自分の記憶と向き合うプロセスを重視した設計になっています。集まったエピソードの一部をOOH広告として掲出する“二段構え”の施策も特徴的です。

今回行われた募集では、日常の中にあるささやかながらも大切な記憶が数多く寄せられました。子どもとの時間、学生時代の思い出、大切な人との日々。どのエピソードにも、その瞬間の感情が丁寧に刻まれており、見過ごされがちな日常の価値にあらためて気づかされる内容だったといいます。
その中から選ばれたエピソードが、屋外広告として掲出されました。
東京駅では、夢をあきらめ地元に帰る日に、見送りに来てくれた当時の恋人(現在の妻)との記憶を描いたエピソードが掲載されました。改札越しに「この人と一緒に生きていきたい」と感じた瞬間を忘れたくない——そんな思いが綴られています。
一方、祇園四条駅では、浪人生活を経て第一志望の大学に合格した日の記憶が掲出されました。下宿の片付けの帰りに見た満開の桜並木と、「がんばってよかった」と感じたその瞬間が、情景とともに描かれています。

「あなたの忘れたくないことはなんですか?」特設サイト。モデルの前田エマ氏によるエッセイやマンガ家うえはらけいた氏による漫画などを紹介

どちらのエピソードも、思わず足を止めて読みたくなる力を持ち、見る人自身の「忘れたくないこと」を思い出させるきっかけとなっていました。
生活者の声を起点に、記憶というテーマと向き合った今回の施策。王氏は、「忘れたくないことは単なる記憶ではなく、人生の大切な瞬間を守るものだと気づかされました」と振り返ります。
企業の研究領域と生活者の感情を丁寧につなぎながら、共感を軸に展開された今回のプロモーション。体験設計とストーリーテリングの両面からも、示唆の多い事例と言えそうです。

“バイク愛と。”で語るブランド。『バリバリ伝説』を起点にした統合プロモーション

バイク王&カンパニーは、バイク漫画『バリバリ伝説』(講談社)を起用した新テレビCMの放映を開始しました。本企画では「バイク愛」を軸に据え、ライダーが抱くバイクへの愛情に対して、買取や販売といったサービスで応えていく姿勢を打ち出しています。

『バリバリ伝説』は、峠を駆けるライダーたちの青春を描いた作品で、1980年代のバイクブームを象徴する存在として知られています。現在でも熱狂的なファンを持ち、『頭文字D』で知られるしげの秀一氏による代表作のひとつです。近年では著名人の愛読エピソードなどをきっかけに、再び注目を集めています。
新CMは『バイク愛と買取』篇、『バイク愛と買取 サービス』篇、『バイク愛と販売』篇の3種類を展開。全国の地上波(一部地域を除く)で放送されるほか、同社のYouTubeチャンネルでも順次公開されています。
さらに、放映開始にあわせて屋外広告とSNSキャンペーンも同時に展開。テレビ・OOH・SNSを横断した統合的なコミュニケーション設計となっています。
屋外広告は、新宿駅地下のJR東西自由連絡通路周辺にて1週間掲出。『バリバリ伝説』の名シーン5選を用いた構成で、作品の世界観とブランドメッセージを重ね合わせています。また、Xでは2月2日から15日までキャンペーンを実施。公式アカウントのフォローと、「あなたのバイク愛」を添えた投稿で参加できる仕組みとなっており、ユーザーの体験や想いを巻き込む設計が特徴です。

『バイク愛と買取』篇。バイクの躍動感を表現するため、イラストを印刷して複数枚をつなぎ、ドラム状に巻いて回転させて撮影する手法を採用した。走行音には、作品に登場するCB750Fの実車を使用しており、作品世界の臨場感を演出した点も特徴

CM全体を貫くコピーは「バイク愛と。」。あえて言葉を言い切らずに余白を残すことで、見る人それぞれが意味を補完できる設計になっています。映像内では、「便利とは程遠い。愛がなければ走れない」「買取して終わるな。その愛も受け継げ」といったコピーを通じて、バイクとライダーの関係性、そしてその想いを引き継ぐ企業としての姿勢が丁寧に描かれています。
本企画を手がけたクリエイティブディレクター/コピーライターの松井一紘氏(FIELD MANAGEMENT EXPAND)は、「バイクは手がかかるけれど、それも含めて愛おしい存在」と語ります。そうした“愛”を受け継ぐ存在としてバイク王を描くうえで、モータースポーツを通じて“生き方”を描いてきた『バリバリ伝説』は、非常に相性の良いモチーフだったといえそうです。
作品の持つ文脈とブランドの価値観を重ね合わせながら、コピーの余白で共感を引き出す今回の施策。複数のメディアを横断しながら一貫したメッセージを届ける、参考になるプロモーション事例と言えそうです。

“みんなに かけ橋”をどうデザインするか。板橋区のブランド刷新

東京都板橋区は1月28日、「みんなに かけ橋 いたばし創造都市宣言」を発表し、新たなオフィシャルロゴとブランドスローガンを公開しました。
発表は令和7年度第3回区長記者会見で行われ、坂本健区長から新スローガン「みんなに かけ橋」が示されました。あわせて公開されたロゴは、一人ひとりの物語をつなぐ“かけ橋”をイメージしたデザインとなっています。

この宣言は、「板橋区基本計画2035」に基づく取り組みの一環です。ここでいう「創造都市」とは、芸術・文化・デザインなどの創造的な活動を通じて、地域の価値創出や課題解決、人と人の交流を生み出し、その循環を継続していく都市のあり方を指します。
板橋区ではこれまで、「絵本のまち板橋」という取り組みを軸に、創造的な地域づくりを進めてきました。今回の宣言は、その土台をもとに、区民とともに新しい未来をつくっていく姿勢を社会に広く伝えることを目的としています。
背景にあるのは、長年にわたる文化的な蓄積です。1981年に板橋区立美術館で「ボローニャ国際絵本原画展」を開催したことを契機に、2005年にはイタリア・ボローニャ市と友好都市交流協定を締結。現在も同展を継続的に開催しているほか、約3万冊の絵本を所蔵する「いたばしボローニャ絵本館」などを通じて、国内外のクリエイターとのネットワークを築いてきました。

また、地域には印刷・製本といったものづくりの基盤があり、それらと結びつくかたちで「絵本のまち」としての取り組みが広がっています。
今回発表されたロゴは、そうした背景を反映するように、絵本を重ねたようにも見えるビジュアルが特徴です。3つのストーリー(世代)を重ね合わせ、一つの“かけ橋”として表現することで、板橋で育まれてきた文化や記憶を次の世代へつないでいく意志が込められています。
デザインを手がけたのは、これまで「ボローニャ国際絵本原画展」のアートディレクションや「絵本のまち板橋」のロゴ、プロモーションビデオ、SDGsボードゲーム「いたばしさんぽ」などに関わってきたアートディレクターの柿木原政広氏です。

絵本のまち板橋プロモーションビデオ(2024年)

また、ブランドスローガンおよび宣言のコピーは、コピーライターの岡山真子氏が担当。人と人のゆるやかなつながりや、気取らず自然に関係が築かれるまちの空気感を、「みんなに かけ橋」というシンプルな言葉で表現しています。
発表当日には、板橋の創造的な取り組みや拠点を可視化した「創造都市宣言マップ」も公開されました。こちらは柿木原氏のトータルディレクションのもと、「板橋区基本計画2035」のイラストも手がける絵本作家・オオノ・マユミ氏が制作しています。

今後も両者は“共創クリエイター”としてプロジェクトに関わりながら、取り組みをさらに広げていく予定です。
板橋区は、「絵本のまち」として培ってきた文化的な基盤を活かし、今後も展開を強化していく方針です。あわせて、ユネスコ創造都市ネットワークへのデザイン部門での加盟も視野に入れています。
地域の歴史や文化資源を丁寧に掘り下げ、それを言葉とビジュアルで再構築していく今回の取り組み。自治体ブランディングにおいても、継続性と一貫性の重要性を感じさせる事例と言えそうです。

沿線の「好き」を未来へつなぐ。阪急阪神HDの環境ブランディング動画

阪急阪神ホールディングスは2月26日、グループの「長期経営構想における環境分野の取組方針」を、より身近に感じてもらうことを目的としたブランディング動画を公開しました。
舞台となるのは、阪急電車や阪急西宮ガーデンズ、阪神タイガースのファーム施設「ゼロカーボンベースボールパーク」、六甲高山植物園など、沿線に広がるさまざまな場所。日常の中にある“好き”がにじむ風景を、やわらかく淡いトーンで描き出しながら、その景色を未来へつないでいくための取り組みへと自然につなげていきます。

「この街は、誰かの『好き』で溢れている」

動画内では、「みどり豊かなまちづくり」や「カーボンニュートラル」「資源リサイクル」といった環境施策を紹介。生活に近い風景の中に溶け込ませることで、取り組みを“自分ごと”として感じられる構成になっています。
本編は90秒・30秒・15秒の3パターンを展開。さらにスピンオフとして「マイ ホームタウン」編、「マイ ベストフレンド」編(各30秒)も制作されています。公開はコーポレートサイトやYouTubeに加え、大阪梅田駅のデジタルサイネージ、関西エリアのテレビCM、グループ各社のSNSなど、多面的なチャネルで展開される予定です。

「マイ ホームタウン」編
「マイ ベストフレンド」編

今回の企画では、単に取り組みを伝えるだけでなく、「誰かの“好き”を守り続けるためには、一人ひとりの選択や行動が大切である」というメッセージも重視されています。鉄道や商業施設といった日常の動線に寄り添う企業だからこそ、その視点を自然に織り込んでいる点が印象的です。
映像の撮影・編集には、写真家の濱田英明氏を起用。家族や子どもたちの自然な表情を切り取る作風を活かし、沿線の空気感とグループの想いを、やさしく包み込むような映像に仕上げています。
また、動画公開にあわせて交通広告も展開。阪急西宮北口駅や阪急西宮ガーデンズ、ゼロカーボンベースボールパーク、六甲高山植物園といった場所の風景に、それぞれの取り組みを重ねたポスターが、3月1日から順次掲出されています。阪急電車・阪神電車の車内中吊りなどでも目にすることができます。

同社グループは今後、脱炭素社会の推進や自然環境の保全、資源循環の促進といったテーマを軸に、環境負荷の低減と企業価値の向上を両立させる取り組みを進めていく方針です。
日常の延長線にある風景から、社会課題へのアクションへとつなげていく今回のコミュニケーション。企業ブランディングにおいて、“共感の入り口”をどこに設計するかを考える上でも、参考になる事例と言えそうです。

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