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2026.4.6

3月話題になった広告、デザイン、サービスまとめ(2026)

2026.4.6

3月話題になった広告、デザイン、サービスまとめ(2026)

とうとう春がきました。いきなり暖かくなってきたので春服を買いに行ってきました。ただ誰にもみせる機会がないので部屋着になっているでだけですけどね。よしまずはダイエットしよっ!

それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!

20年連続1位の理由とは。長野県の“オール信州”移住戦略

長野県は、宝島社『田舎暮らしの本』(2026年2月号)で発表された「移住したい都道府県ランキング」において、20年連続1位を獲得しました。2025年1月号から11月号までの読者アンケートをもとにした結果で、県内への移住者数も増加傾向にあります。2024年度は県外からの移住者が過去最多の3,747人、移住相談件数も全国1位となる2万5,891件に達しました。

この20年連続という結果の背景には、県と市町村、民間企業・団体が連携する“オール信州”の取り組みがあります。その中核となっているのが、2006年に設立された「田舎暮らし『楽園信州』推進協議会」です。
担当者によると、長野県が選ばれ続けている理由のひとつは、豊かな自然環境と首都圏からのアクセスの良さにあります。さらに、県内には77の市町村があり、地域ごとに気候や文化が異なるため、多様な暮らし方が選べる点も特徴です。こうした前提のもと、県全体での発信と各市町村による個性あるPRが相乗効果を生んでいるといいます。
協議会では、都市圏での移住フェアや相談会の開催、移住相談窓口の設置、セミナーの実施などを継続的に展開。仕事と暮らしをセットで提案するイベントなども行い、具体的な移住イメージを持てる機会を提供してきました。

情報発信の面では、若者や女性、子育て世代を重点ターゲットに設定。移住総合Webメディア「SuuHaa」では、“行政らしくない”切り口で、信州でのリアルな暮らし方や働き方を発信しています。2021年度にはグッドデザイン賞を受賞し、2024年には閲覧数が21万件に達するなど、着実に認知を広げています。
さらに2025年度には、長野県ゆかりのインフルエンサー21組を「長野県広報パートナー」として起用。「移住×信州やまほいく」をテーマにした動画発信を行った結果、「SuuHaa」への資料請求数が前年同月比で約2.3倍に増加しました。
また、移住だけでなく「二地域居住」という新しいライフスタイルの提案にも力を入れています。専用サイト「ニブンノナガノ」で情報発信を行うほか、セミナーやイベントを通じて、多様な関わり方を提示しています。

リアル施策も強化されており、東京の「ふるさと回帰支援センター」では相談員を増員。さらに「信州で暮らす、働くフェア」では、暮らしと仕事を一体的に相談できる場を提供し、2025年7月開催時には過去最多の来場者数を記録しました。
加えて、実際の暮らしを体験できる「信州ワーキングホリデー」も新たに実施。県内10市町村と連携し、参加者が地域との交流を通じて生活や仕事の魅力を体感できる機会を創出しています。
広域での取り組みとしては、地域おこし協力隊「信州移住コネクター」を4エリアに配置し、セミナーや交流会の企画、情報発信、ネットワークづくりなどを推進しています。

さらに長野県は、2050年を見据えた「信州未来共創戦略」を策定。「若者・女性から選ばれる社会づくり」や「移住・関係人口の増加」など、4つの柱を軸に、各主体が具体的なアクションを進めています。
担当者は今後について、「これまでの取り組みをさらに強化しながら、二地域居住など多様な関わり方を含めて、長野県と関わる人を増やしていきたい」と話します。
20年連続1位という結果の裏には、情報発信と体験設計、そして地域全体での連携による継続的な取り組みがあります。移住促進を“戦略的にデザインしている”好例として、非常に示唆の多い事例と言えそうです。

“演技開始1秒前”を切り取る。『メダリスト』新聞広告の表現設計

講談社はフィギュアスケートを題材とした漫画『メダリスト』(作:つるまいかだ)の最新14巻の発売を記念し、朝日新聞に新聞広告を出稿しました。

「奇跡よ、ついてこい。」結束いのりバージョン(東京本社版)。

今回のクリエイティブは、登場人物ごとに5種類を制作。東京本社版・大阪本社版・名古屋本社版・西部本社版・北海道支社版で刷り分けて展開され、それぞれ異なるキャラクターとコピーが掲載されています。
テーマは「演技開始1秒前」。フィギュアスケートの試合で、拍手が鳴り止み、音楽が流れ出す直前の一瞬を切り取った表現です。
広告には、主人公の結束いのりをはじめ、コーチの明浦路司、ライバルの狼嵜光、オリンピック金メダリストの夜鷹純、そして岡崎いるかの計5人が登場。それぞれが単独で描かれ、キャラクターごとに異なるコピーが添えられています。

「大丈夫。奇跡は、君を選ぶ。」明浦路司バージョン(名古屋本社版)。
「私の強さだけに、焦がれてよ。」狼嵜光バージョン(北海道支社版)。

制作を手がけたのは、博報堂のアクティベーションプラナー・嶋元司氏らのチームです。今回の企画は、制作メンバーが実際に「全日本ジュニア選手権」を観戦したことをきっかけに生まれました。
嶋元氏は、「試合を観て改めて感じたのは、演技直前の静寂と緊張感でした。広いリンクの上でひとり立ち、音楽を待つ選手の姿には強い覚悟が宿っています。その“演技開始1秒前”に焦点を当て、キャラクターそれぞれの覚悟を表現する企画を考えました」と振り返ります。

「金メダルは、必然だ。」夜鷹純バージョン(西部本社版)。
「願うな。闘え。」岡崎いるかバージョン(大阪本社版)。

また、コピーライティングを担当した博報堂の高橋かのん氏は、「フィギュアスケートは、奇跡を見守るスポーツだと感じました。氷の上に“絶対”はなく、観客は祈ることしかできない。一方で『メダリスト』に登場するキャラクターたちは、その奇跡を自らの手で引き寄せようとします」と語ります。
そのうえで、「同じ舞台に立っていても、演技開始1秒前に自分を奮い立たせる言葉はきっと一人ひとり違うはず。そして、読む人の心に響く言葉もそれぞれ異なる。だからこそ、5人それぞれにコピーとデザインを分けて制作しました」と、企画意図を説明しています。
一瞬の静寂に宿る覚悟を、言葉とビジュアルで丁寧に切り取った今回の広告。キャラクターごとの内面にフォーカスすることで、作品の世界観をより深く伝える表現設計となっています。シリーズの魅力を新たな角度から届ける、印象的な事例と言えそうです。

“攻めの休養”をデザインする。徳島県の観光プロモーション

徳島県は首都圏在住者に向けた観光プロモーション「徳島で休んでく?」を発表しました。発表会には徳島県知事の後藤田正純氏のほか、テレビCMに出演する犬飼貴丈さん、瀬戸璃子さん、特別ゲストとして森三中、そして休養学の専門家・片野秀樹氏が登壇しました。

今回のプロモーションは、効率やスピードが求められる現代において失われがちな“余白”に着目したもの。自然や食、文化に五感で触れることで明日への活力を養う「積極的な休息=攻めの休養」という新しい“休み方”を提案しています。ターゲットは首都圏の生活者です。
施策の始動にあわせて、犬飼貴丈さん(阿波とくしま観光大使)と瀬戸璃子さんを起用したテレビCMを2月2日から首都圏で放送。また、同コンセプトのキービジュアルも2月下旬から主要駅などで順次掲出し、「心と体をほどく場所」としての徳島の魅力を発信していきます。

犬飼さん出演の「徳島で休んでく?」牟岐線篇。発表会では「徳島で過ごした時間が今の僕に影響を与えている」と打ち明けた。そのほか阿波尾鶏篇、サーフィン篇に出演している。

新CMでは、徳島の各地で心身をゆるめる時間が丁寧に描かれています。犬飼さんはローカル線・牟岐線に揺られる旅や、名産の阿波尾鶏を味わうシーンを通じて“休み方”を体現。一方、瀬戸さんは鳴門のうずしおや祖谷温泉、藍染め、うだつの町並みなどを巡りながら、徳島ならではの時間の流れを伝えています。

発表会の中盤では、徳島を何度も訪れているという森三中が阿波おどりの衣装で登場。さらに、『休養学:あなたを疲れから救う』の著者でもある片野秀樹氏が登壇し、「休養とは単に休むことではなく、活動能力を取り戻すこと」と定義。休息・運動・栄養・親交・娯楽・造形/創造・転換の7つから成る「休養モデル」を紹介しました。
終盤には「もしも1泊2日のツアーを組むなら?」というテーマでトークセッションも実施。森三中は徳島グルメを軸にしたプランを提案し、犬飼さんは牟岐線の旅や海辺での時間、SUPなどを組み合わせた“デトックス型”の過ごし方を紹介しました。
犬飼さんは最後に、「徳島はまだ知られていない魅力にあふれた場所。訪れた際には、自分と向き合いながらゆっくりとした時間を過ごしてほしい」とコメントしています。

瀬戸さん出演のうずしお篇。「(見られない日もある)うずしおを見ることができてラッキーでした」と瀬戸さん。そのほか藍染め篇、かずら橋篇、古民家ステイ篇、祖谷温泉篇、うだつの町並み篇に出演している。

あわせて特設サイトも公開されており、CMやキービジュアルに加え、「休養モデル」に紐づいた観光スポットも紹介されています。
“休むこと”をポジティブに捉え直し、体験として提案する今回のプロモーション。コンセプト設計からクリエイティブ、体験導線まで一貫して設計された、観光ブランディングの好例と言えそうです。

言葉だけで語るブランド。ぴあ「Life is Pure.」のステートメント設計

ぴあは2026年1月5日、新たな企業ステートメント「Life is Pure.」を公式サイトで発表しました。同日付の日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞の朝刊には、この言葉を掲げた企業広告を掲載。ビジュアルをあえて用いず、言葉とロゴだけで構成された紙面は、静かでありながら強い存在感を放っています。

今回のステートメント策定は、ぴあ創業者で代表取締役社長の矢内廣氏が、ライトパブリシティの杉山恒太郎氏を訪ねたことから始まりました。きっかけは「広告をつくること」ではなく、「そろそろ、ぴあとして発言してもいいのではないか」という一言だったといいます。
これまで積み重ねてきた歴史や活動への自負、そして新しい世代の社員が増えてきた今だからこそ、企業としての価値観をあらためて言葉にする必要がある——。そんな問題意識を受け、まずは軸となる言葉をつくることからプロジェクトが動き出しました。
コピー開発を担当したのは、コピーライターの佐倉康彦氏。当初はタグライン的なコピーを数多く検討したものの、どれもしっくりこなかったといいます。そんな中で、「ぴあがなかったら今の自分はいない」と感じた原体験に立ち返り、ある考えにたどり着きました。
ライブや映画、舞台、アートに触れたときに訪れる、理屈を超えた“純粋な瞬間”。その時間を「ピュア・モーメント」と捉え、「ぴあがないと、笑えない」「ぴあがないと、ドキドキしない」といった言葉を重ねていく中で生まれたのが、「Life is Pure.」というステートメントです。

杉山氏も「最後の最後にたどり着いた言葉でしたが、これだと思えた」と振り返ります。
ぴあは1972年に創刊された情報誌『ぴあ』を起点に、日本のエンターテインメント文化を支えてきました。現在はチケッティングにとどまらず、イベントの企画・主催やアリーナ運営などへと事業領域を拡張しています。一方で、紙媒体の『ぴあ』を知らない若い世代に対して、企業としての価値をどう伝えていくかが課題でもありました。
こうした背景から、これまで社内に浸透してきた理念を土台にしながら、次は外に向けてブランドを伝えていく「アウターブランディング」へと舵を切ります。
ビジュアルの設計を担ったのは、アートディレクターの服部一成氏。コピーを見た瞬間に、「広告というよりも、Tシャツやステッカーのように自然と広がっていく言葉」というイメージを持ったといいます。デザインは、角の丸い書体を用いた3行センター揃えのシンメトリー構成。言葉そのものがメッセージとして立ち上がるように設計されています。

また、このステートメントを立体的に伝えるために、公式サイトではムービーも公開。キャップやレコード、Tシャツといった日常のアイテムに「Life is Pure.」の言葉が重なり、生活の中に自然と入り込んでいくような表現が展開されています。
キャンペーンは新聞広告を皮切りに、渋谷駅構内のOOHや都内各所のバス停広告へと展開。さらに、クレジットカードや社員の名刺にもステートメントが取り入れられ、ブランドの言葉として日常的に触れられる設計になっています。
杉山氏は、「新聞はキャンペーンの“表紙”だと思っています。社会に向けて意思を示す場として、ぴあにとってふさわしいメディアでした」と語ります。
価値観が多様化する今、「純粋」という言葉の受け取り方も人それぞれです。それでも、音楽や映画、舞台といった体験の中で生まれる“心が動く瞬間”は、多くの人に共通するものでもあります。
その感覚を、言葉としてシンプルにすくい上げた今回のステートメント。「言葉そのものをデザインする」ことでブランドを伝える、非常に示唆に富んだ事例と言えそうです。

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