日傘ブランド各社が続々とプロモーションをスタートしています。近年は猛暑の常態化や美容・健康意識の高まりを背景に、日傘市場そのものが拡大。なかでも、数年前まではニッチだった「男性向け日傘」は、俳優を起用したCMが展開されるほど、徐々にマスマーケット化が進んでいます。
とはいえ、「日傘=女性のもの」というイメージはまだ根強いのも事実。そんな中で、各社は“男性が自然に日傘を手に取る理由”をどうつくっているのでしょうか。
[目次]
完全男性向けブランド「Wpc. IZA」の挑戦
「新たな可能性を生み出す」をスローガンに、2004年に誕生したワールドパーティーのブランド「Wpc.」。
同社は2021年、男性向け日傘に特化したブランド 「Wpc. IZA」 を立ち上げ、市場開拓に本格的に乗り出しました。

① 市場そのものを育てる啓蒙施策
マイノリティな商品だからこそ、商品訴求と同時に“文化づくり”が必要。その考えのもと、Wpc. IZAでは日傘そのものの必要性を伝える施策にも力を入れています。
2024年には、7月の実需期に東京メトロ丸ノ内線でトレインジャックを実施。クールビズの新しい選択肢として「日傘」を“提案書形式”で紹介し、売上目的というよりも「男性用日傘のパイオニアとして市場を広げる」ことを重視した施策でした。
また、天気予報になぞらえた特設サイト「日傘予報 for クールビズ」も開設。気温や湿度、日射量などのデータから“日傘指数”を提示し、「日傘を使うかどうか」を判断する新しい指標をつくり出しています。


② 著名人起用でイメージを更新
男性向け日傘を“特別なもの”から“当たり前の選択肢”へ。そのために、Wpc. IZAでは毎年ブランドテーマに合わせて著名人を起用しています。
初期は「男性向け」を強く印象づけるため、窪塚洋介さんやオダギリジョーさんを起用。2024年には美容要素も含め、より幅広い層に届くよう岡田将生さんを採用。そして2025年は「This is COOL.」をスローガンに、窪田正孝さんをビジュアルモデルに起用しました。

③ 早い段階でのメディアリレーション
Wpc. IZAでは年2回の内覧会を実施し、メディアに向けて商品や戦略を直接伝えています。発売前に実物を体感してもらうことで理解が深まり、実需期に合わせた露出獲得につながっているといいます。
④ ロジカルに響くエビデンス訴求
男性ユーザーは機能性を重視する傾向が強いため、Wpc. IZAでは“遮熱性”を中心に、サーモグラフィなどで体感温度の違いを可視化。「なぜ必要か」「どれくらい違うのか」を直感的に伝えています。

嗜好に合わせて、訴求も進化
2025年はあえて“晴雨兼用”ではなく、日傘に振り切った訴求へ。背景には、男性の日傘利用が一定浸透したこと、そして記録的猛暑があります。
広告手法も、マスよりまずはYouTubeなどのデジタル広告を中心に展開。「興味のある人に、何度も、しっかり届ける」ことで、効率的な認知拡大を図っています。
男性向け日傘を“商品”としてではなく、“文化”として育てていく。Wpc. IZAのプロモーションは、市場づくりとブランドづくりを同時に進める好例といえそうです。
ユニセックス視点で、男性の“抵抗感”に向き合う
1885年(明治18年)創業、2025年に140周年を迎えたムーンバット。
長い歴史の中で事業内容や商品ラインアップを柔軟に変化させながら、時代とともに歩んできた老舗ブランドです。
近年は温暖化の進行や健康意識の高まりを背景に、傘の役割そのものが広がり、晴雨兼用傘や日傘のニーズが年々高まっているといいます。
ムーンバット 常務執行役員 戦略事業部長の鈴木康史氏によると、以前は「男性向け」「女性向け」と明確に分けた商品企画を行っていましたが、近年はジェンダーレスの流れを受け、「ユニセックスで提案できる商品」の強化に注力しているとのこと。
一方で、まだ伸びしろのある男性市場に対しては、「男性が日傘にどんな抵抗感を持っているのか」を丁寧に掘り下げ、そのネガティブ要素を埋めていく視点で、商品開発やPRを行っています。
実際に社内では、男性社員全員が遮光日傘を持ち、ビジネススタイルに日傘を取り入れる取り組みも実施。“まずは自分たちが使ってみる”という姿勢が、説得力につながっています。

ロジカルに組み立てる商品・PR戦略
ムーンバットでは、コンセプト策定やプロモーションにおいても、感覚だけに頼らない、ロジカルな設計を重視しています。
・マーケティング分析をもとに、次シーズンの注力ポイントをセグメント化
・リーチしたいターゲットを明確に設定
・KPIを定め、達成までのロードマップを描いたうえでPR戦略を構築
こうしたプロセスを踏まえ、新商品では「競合との違いが一目でわかる」伝え方を意識しているそうです。

ネーミングで記憶に残し、検索にも強く
ムーンバットの商品といえば、
「マジで軽い傘 マジカルテック」
「3秒でたためる傘 /urawaza」
「kowaza」など、思わず口にしたくなるネーミングも特徴的です。
これは親しみやすさだけでなく、検索されやすさ=SEOも意識した設計。機能開発は市場トレンドを踏まえつつ、価格帯とのバランスを見極め、同質化しやすいカテゴリだからこそ、“名前で差がつく”工夫を続けているといいます。


メディア露出とデジタルの使い分け
鈴木氏は、テレビCMについて「費用対効果の面でハードルが高い」としつつも、情報番組など地上波での露出は即効性があり、売上貢献度が高いと評価しています。そのため、PR会社と連携したメディアプロモーションには特に力を入れているそうです。
加えて、EC化率の上昇を背景に、SNSやWEB広告も重要なチャネルとして活用。商品フェーズや目的に応じて、メディアを使い分けています。
猛暑日やゲリラ豪雨が当たり前になりつつある今、晴雨兼用傘は“あったら便利”から“なくてはならない存在”へ。市場はまだまだ拡大が見込まれています。
「140年の節目を迎える企業として、これからもお客様目線の商品を届け続けたい」。ムーンバットは、老舗でありながら変化を恐れず、生活者にフィットする価値を更新し続けています。
