10月になりファッションの楽しい気候になってきました。ただ物欲もどんどん顔をだしてきており、スマホを見ながらのポチポチが止まりません10月は物欲の秋だとしみじみ思う今日この頃です。
それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!
[目次]
“熱気”をデザインする。AC部が描く「横濱漢祭2025」の世界

横浜DeNAベイスターズは阪神タイガースとの三連戦で「横濱漢祭(おとこまつり)2025」を開催しました。
選手もファンもスタジアム全体も一体となって盛り上がる恒例イベントで、今年で3回目の開催。今回も昨年に続き、空手家の角田信朗さんが“応援総長”として熱い声援を届けました。


テーマは「世界で一番熱い夏と漢たちの闘い」。ビジュアルを手がけたのは、ユニークな作風で知られるクリエイティブチーム「AC部」。
キービジュアルには角田さんをはじめ、チームマスコットのDB.スターマン、選手、そしてファンの姿が勢ぞろい。
疾走感と迫力に満ちたイラストが印象的で、交通広告としても展開され、多くの人の目を引きました。
AC部の安達亨氏は横浜出身ということもあり、ベイスターズへの思い入れはひとしお。
「“暑苦しさ”と“漢っぽさ”をテーマに、汗と湯気と気合いをストレートに描き込みました。
ファンも選手も主役として入り乱れる構図で、お祭りのような一体感と地域全体の熱を感じてもらえるよう意識しました」と語っています。
SNS上でも「AC部×ベイスターズ」という意外なコラボに喜ぶ声や、強烈なビジュアルに驚く声が多数。話題性の高いプロモーションとなりました。


さらに、イベント期間中は横浜スタジアム最寄りのJR関内駅が「漢内(おとこうち)駅」に変身するというユーモアたっぷりの演出も。会場の外からすでに“漢祭モード”が始まっていました。
スタジアム内では、「漢の汗は勝利を呼ぶダイヤモンド!熱血発汗応援席」や「灼熱の漢熱波!全力熱波師席」など、名づけからして熱量満点の応援エリアを設置。
さらにイベントロゴをモチーフにしたオリジナルグッズも登場し、観る・応援する・体験するすべてが熱く盛り上がる三日間となりました。
デザインの力で“熱気”を可視化した今回のプロジェクトは、スポーツ×クリエイティブの好例といえそうです。
150年の歩みを“背中”で語る。古河機械金属の周年ムービー「私たちの背中」

古河機械金属は、2024年8月8日に創業150周年を迎えました。
この節目を記念し、俳優の駒井蓮さんとグループ社員160名以上が出演するPR動画「私たちの背中」を公開。長い歴史を支えてきた“人”の想いに焦点を当てた企画です。


同社ではこれまでも、周年シンボルマークの制作や交通広告の展開など、さまざまな施策でアニバーサリーイヤーを盛り上げてきました。そして今回のPR動画では、企業の歩みを象徴する“背中”をテーマに、働く姿勢そのものをストレートに表現しています。
物語は、駒井蓮さんが演じる女性社員が出勤途中、先輩社員の背中を見つめるところから始まります。
その背中の先には、さらに多くの社員たちの背中が連なり、やがて実際の古河機械金属グループの社員たちの姿へとつながっていく。
そこに重ねられるのは、役職員一人ひとりの「仕事へのリアルな思い」。企業150年の歴史を、言葉よりも“背中”で語るような構成です。

さらに、スピンオフ動画「背中は語る」も同時公開。
こちらでは、160名を超える社員の背中と46名のインタビュー映像で構成されており、日々の現場で働く人々の表情や声が、企業の原動力として丁寧に描かれています。
華やかな演出ではなく、実直に「人」を映し出すことで、古河機械金属という企業の信念と温度感を伝える——そんな“ものづくり企業らしい”周年企画となっています。
“最高の普通”を、手で紡ぐ。SHIPS 50周年キャンペーン「CRAFTMAN, SHIPS」

1975年に渋谷・道玄坂で誕生したセレクトショップ「MIURA&SONS 渋谷店」からはじまり、2025年に設立50周年を迎えるSHIPS。その節目に向けて、今年2月にはステートメント「青いまま進む。」を掲げ、9月からは秋冬キャンペーン「CRAFTMAN, SHIPS(クラフトマンシップス)」をスタートしました。


SHIPSが大切にしているのは、「進化する老舗」という姿勢。
2023年には新たな企業理念「SHIPSの羅針盤 ― SPIRIT OF SHIPS」を策定し、その中核にあるキーワードが“最高の普通”です。
「同じクオリティを、どんな時代でも保ち続けること。その挑戦を続けたい」という想いが込められています。
50周年を機に、これまでの歴史を振り返ると同時に、これからの100年を見据えた未来へのメッセージとして発信された今回のキャンペーン。
「お客様や取引先、そして従業員すべての方々と“共に航海を続ける”という気持ちを込めています」と、SHIPS 販売促進部プレス課の中西摩耶氏は話します。
クリエイティブを担当したのは、博報堂Gravityと博報堂キャビンによるファッション広告特化チーム「CREATIVE SESSION」。
ディレクターの宝蔵寺亮氏は、「50年という長い航海を経ても、常に“最高の普通”を追い続ける姿勢を表現したかった」と語ります。
「この変わらない原点こそが挑戦であり、クラフトマンたち(=SHIPSの人々)が未来へ糸を紡ぐように続けていく姿を描きました」とも。
コピーライターの野澤幸司氏は、「“ふつう”をつくり続けることは、実は途方もない挑戦。『青いまま進む。』という言葉には、冷静さの中にある情熱、静かに燃える青のような覚悟を込めました」とコメントしています。
また、今回のクリエイティブの象徴となったのが「刺繍」。
アートディレクターの原野賢太朗氏は、「完璧な美しさではなく、“好きでたまらない”という初心を大切にしたかった。だからこそ、少し荒削りで人の手の温もりを感じる“刺繍”という表現を選びました」と語ります。


特に注目を集めたのが、499枚もの刺繍を一枚ずつつなぎ合わせて制作されたWebムービー。
映像ディレクターの牧野惇氏(『YOASOBI/群青』『Vaundy/置き手紙』などを手がける)は、「デジタル編集ではなく、刺繍そのものの“よれ”や“しわ”まで生かした」と話し、糸の動きをリアルに再現する緻密な演出が光ります。
「最高の普通」を、テクノロジーではなく“人の手”で描く。
それが、SHIPSが50年の歩みで積み重ねてきた“クラフトマンシップ”の証といえそうです。
9月には特設サイトがオープンし、アニメーションムービーやビジュアルを公開。
交通広告や東京メトロ銀座線・丸ノ内線の車両ジャックなど、街を舞台にした展開もスタートしています。
50周年を機に、ブランドとしての原点と未来を丁寧に紡ぐキャンペーンとなりました。
「世界最大の運動会」開幕。TBS×電通が描く、親しみやすい世界陸上のデザイン

国立競技場を中心に開催されている「東京2025世界陸上競技選手権大会」。
東京での開催は1991年以来、実に34年ぶりとなります。世界約200の国と地域から2000名を超えるトップアスリートが集結し、国内ではTBS系列が中継を担当しています。
そんな大会を前に、TBSは首都圏で大規模な交通広告を展開しました。
掲げられたコピーは「世界最大の運動会開幕」。
巨大OOH(屋外広告)や車両ジャックなどを通して、“競技の緊張感”よりも“ワクワクするお祭り感”を打ち出した大胆なキャンペーンです。

クリエイティブディレクターを務めたのは、電通の尾上永晃氏。
「34年ぶりというタイミングだからこそ、これまで世界陸上にあまり興味のなかった人にも、思わず振り返ってもらえるような広告にしたかった」と話します。
一般的なスポーツ広告が“肉体”や“精神”にフォーカスするのに対し、今回は“親近感が持てる世界陸上”をテーマにした点がユニークです。
東京メトロ銀座線のレトロライナー車両では、カール・ルイスやウサイン・ボルト、桐生祥秀といった名選手たちの「言葉」に焦点をあてた広告を展開。
過去の名シーンを通して、挑戦の歴史を振り返る内容になっています。



さらに、新宿メトロプロムナードや渋谷109のOOHでは、「運動会」をモチーフにしたデザインを採用。
誰もが親しみを感じられる“学校の運動会”の雰囲気を通して、世界大会をぐっと身近に感じられる仕掛けです。
コピーライターの吉村優作氏は、「学生の頃から“競技そのもの”よりも“運動会の気配”が好きだった」と語ります。
「日曜の午後、遠くから歓声が聞こえてくるだけで、なんだか嬉しい気持ちになりますよね。
世界陸上も、そんな“幸せな日曜日の光景”のように、多くの人に開かれた大会であってほしい。『世界最大の運動会』という言葉には、そんな願いを込めました」と話します。
プランナーの中原小百合氏は、「“運動会”というテーマだからこそ、選手へのリスペクトを持ちつつ細部まで丁寧につくり込みました」とコメント。
実際に新宿のOOHでは、小学生が描いた標語や絵画を取り入れ、まるで本物の学校掲示板のようなデザインに。
アートディレクターの碓井達朗氏は「“キターーー!”の手書き文字は、最後の最後に思いついて加えました」と笑います。
世界最高峰のアスリートが集う大会を、あえて“運動会”という身近な言葉で包み込む。
そのユーモアとデザイン力が、多くの人の足を止める交通広告になりました。
広告は大会最終日の9月21日まで掲出され、街全体をやさしく盛り上げています。
