夏本番を迎え、太陽が力強く輝く8月が始まりました。この時期は、夏祭りや花火大会など、日本の伝統的なイベントが多く行われ、わくわくするような活動が満載です。広告クリエイティブもあらゆる手法や表現を用いて盛り上がりを見せています。
それでは今月も話題になったサービスやトレンド・デザインをご紹介いたします!
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高田馬場駅で2019年から続く、自動車教習所の謎の広告

埼玉県和光市に位置する「レインボーモータースクール」は、便利な通学バスサービスを提供しています。この教習所は、多くの受講生にとってアクセスしやすい高田馬場駅でフラッグ広告を展開し、本年度もその新たな広告キャンペーンを開始しました。

その内容は、ヨーロッパの王族を思わせる女性の顔を大胆にフィーチャーし、「資格がなければ免許を取ればいいじゃない」という挑戦的なコピーが添えられています。加えて、「※上から目線の広告です」というユニークな注釈も付され、その斬新さがSNSで頻繁に話題になっています。これは、過去6年間にわたって続けられている広告戦略の最新作で、多くの注目を集め続けています。

こちらの広告キャンペーンは、2019年からスタートしています。このプロジェクトは、ホンダレインボーモータースクールが電通に依頼し、高田馬場駅構内や電車内での広告展開が実施されました。この初期の段階から、彼らの広告は多くの通勤者の目を引き、認知向上に大きな貢献をしています。
キャンペーンを担当したコピーライターの飛田ともちか氏は、レインボーモータースクールの広告プロジェクトをこう振り返えっています。
「当時、若手クリエイターたちがアサインされ、高田馬場で集まる若者たちをターゲットに、面白おかしい広告を制作しました。自由な発想を活かし、時には電車というメディアをも逆手に取るような挑戦的なコピーを多数生み出しました。例えば、『正面より横顔の方があなたはカッコいい。』といったコピーは、その一例です」と語っています。
一方、レインボーモータースクール自体も従業員からのアイデアを基に内製での電車内広告を展開しており、これがまた別の角度から注目を集めています。「クライアントが作る広告に負けたくないという気持ちが強く、毎回、新しい表現を模索しています。例えば、猫の可愛さを前面に出したり、スマホ広告のように免許証を紹介するなど、限られた予算の中でもアイデアで勝負しています。それが、この仕事の醍醐味でもあります」と飛田氏は言及しています。



3人の国民的マンガの「父」が語り合う、ユニクロの父の日広告

ユニクロが、「父の日」に合わせたプロモーションで新聞広告を出稿しSNSやその他メディアなどで多くの話題を呼んでいます。広告のタイトルは「3人のお父さんたち」で、人気アニメシリーズ『ちびまる子ちゃん』の「ヒロシ」、『天才バカボン』の「パパ」、『あたしンち』の「父」の3人のキャラクターが並び、それぞれの独特な父親像を表現しています。
またその前後には、XやInstagramなどのSNSで関連した投稿も行われています。

ユニクロの最新広告キャンペーンの背後にあるインスピレーションを、プロジェクトのクリエイティブディレクターである電通の井戸真紀子氏が明かしました。彼女によると、この広告の着想は「日本のお父さんの半分は父の日にプレゼントを受け取っておらず、父の日は母の日と比べて忘れられがち」というデータから始まりました。しかし、一方で実施された調査によれば、「お父さんは家族からの『ありがとう』の言葉で大きな元気をもらい、内心では父の日をとても楽しみにしている」とも明らかになっています。
井戸氏はこの広告を通じて、「そんなお父さんたちの気持ちを代弁したいと考え、日本だけでなく世界的にも有名な父親キャラクターである『ヒロシ』、『パパ』、『父』を一堂に会させ、彼らにその想いを表現してもらいました。この取り組みにより、父の日の意義と感謝の重要性が、日本中の人々に伝わることを目指しています」と述べています。このキャンペーンは、父の日への新たな視点を提供し、多くの感動を呼び起こしています。

アートディレクターの玉置太一氏は、ユニクロのこの広告のデザイン意図について詳しく語っています。「紙面上で、『ちびまる子ちゃん』のヒロシ、『天才バカボン』のパパ、『あたしンち』の父が、普段は異なる世界にいながらも、同じ方向を向き、同じポーズで、嬉しそうに歩いている姿を描きました。目線や腕を振る角度が揃っているのは、お父さんたちが共感し合う感情を象徴しています」と述べています。
SNSで共有されたコンセプトアートでは、3人のお父さんたちがちゃぶ台を囲んで父について語り合うシーンが描かれています。「少しのお酒を交えて楽しそうに話が弾み、つい本音が漏れることも。お父さんという存在は、『父の日が楽しみです』というようなことを気恥ずかしくて家族には言えないものですが、その秘めた本音を広告に込めました」と玉置氏は明かしています。
彼らのチームは、ユニクロの2022年と2023年の「母の日」と「父の日」の広告も手掛けており、22年には『あたしンち』の母と父が、23年には『ちびまる子ちゃん』のまる子とお母さん、ヒロシが登場しています。この連続したキャンペーンは、家族の日々の感謝を形にし続けています。
ゼブラ「ハイマッキー」のオリジナルキャラ誕生

ゼブラが展開する油性マーカー「ハイマッキー」がブランドのオリジナルキャラクター「Hi! Mckee」を発表しました。


「Hi! Mckee」は、1976年に発売され、2023年末には累計販売本数が10億本を突破した人気マーカー「ハイマッキー」の新キャラクターです。このキャラクターは、好奇心旺盛でハイテンション、さらに創造性が高く、ポジティブで音楽を愛するオープンマインドな性格を持っています。また、頼りがいがありながらもちょっと天然な一面も持ち合わせているPOPで可愛らしいキャラクターです。
開発の背景には、アートの世界で広く愛用されている「ハイマッキー」の創造の力を象徴するキャラクターとして位置づけたいという思いがあります。面白いポイントに出会うと、細い方のキャップがとれて「!」マークに変わるユニークな特徴も持っています。
この新キャラクターのお披露目と同時に、岡崎体育が作詞・作曲を手掛けたテーマソングも発表され、キャラクターの魅力をさらに引き立てています。

「Hi! Mckee」は、公式Instagram、X(旧Twitter)、および専用のWebサイトも立ち上げられ、ファンとの交流などさまざまな展開を検討中のようです。2025年以降には「Hi! Mckee」のオリジナルアイテムも開発される予定であり、2026年に迎える「ハイマッキー」の発売50周年に向けて、さらに多角的なプロモーションが計画されていることが明らかにされました。これから随時キャラクターを利用したキャンペーンが展開されていくと思われます。キャラクター展開の好事例として今後の動きが楽しみな案件です。
ロート製薬の匂いケアブランド「母の日」「父の日」ペアで新聞広告

ロート製薬が「父の日」に合わせて新聞広告「パパのにおいが好き。」を出稿しています。この広告は、「母の日」に出された広告の続編として位置づけられており、5月12日に出稿された「母の日」広告と合わせると、一つの美しい家族のイラストが完成します。この連続した広告は、夕暮れ時にお母さん、お父さん、そして子ども2人が手をつないで歩く姿を描いており、家族の絆の大切さを象徴しています。

このキャンペーンは、同社の大人の女性向け匂いケアブランド「デオコ」と男性用匂いケアブランド「デ・オウ」を中心に展開されました。5月の母の日には「デオコ」製品が、6月の父の日には「デ・オウ」製品がそれぞれの広告に掲載され、特定の日に合わせたブランドコミュニケーションが図られています。
母の日の広告は、母親が眠る子どもを優しく抱き上げている様子を描き、その際のさまざまな「におい」に焦点を当てた文章が添えられています。例えば、「やさしく抱き上げてくれるママのにおい。」「急いで自転車を漕いで保育園に向かうママのにおい。」などがあります。
このプロジェクトを担当した電通のクリエイティブディレクター、青野隆仁氏によると、元々は父の日に合わせた「デ・オウ」の単独広告を計画していましたが、後に母の日の広告と組み合わせることで、両ブランドを連携させるアイデアに発展しました。新聞広告はそれぞれ全15段で構成され、並べると全30段のビジュアルストーリーが完成します。このように、ロート製薬は感覚的な要素を駆使して、視覚的にも心に残るメッセージを伝える広告を創出しています。

父の日の広告では、ロート製薬がまたもや心温まるシーンを描き出しています。子どもをおんぶする父親の姿をフィーチャーし、「パパのにおいを感じながら、たくさん眠ってきた。」「なかなか寝付けない夜にパパの腕の中で。」というような心に響く文章が続きます。
イラストは子育て世代に人気のイラストレーター、つむぱぱ氏による温かみのあるタッチで、「たくさん遊んだ後の帰り道」を描いています。このイラストは、家族の何気ない一コマを捉え、親子の深い絆を感じさせる作品に仕上がっています。アートディレクターを務めた電通の杦本翔吾氏は「広告を通じて、ママとパパのどちらにも好意的に受け入れてもらえるよう心掛けました。紙面を並べると、親子のつながりだけでなく、家族全員が揃った大きな絵としてのつながりも感じられるようなギミックを取り入れた」と語っています。
神戸須磨シーワールド開業、シャチ・ウミガメ・ペンギンの実寸大広告登場

神戸市に新しくオープンする「神戸須磨シーワールド」が、その開業を前にJR大阪駅で目を引く屋外広告を展開しています。この広告は、「すべてのいのちは、こんなに大きい。」というメッセージを添えて、シャチやウミガメ、ペンギンなど70種類の海の生き物がリアルな大きさで描かれています。これらの生き物がゆったりと泳ぐ様子を通じて、海の壮大さとその住民たちの美しさを感じさせるデザインになっています。


JR大阪駅の地下道中央エリアに展開されている「神戸須磨シーワールド」の広告は、通行人にとってまるで海の中を歩いているかのような体験を提供しています。この広告には、シャチやウツボ、ペンギン、アザラシなど、多種多様な海の生き物がリアルなイラストで描かれており、それぞれの生き物の横にはその生態や特徴を紹介するコピーが添えられています。

「神戸須磨シーワールド」のプロモーション活動は、屋外広告だけでなく、テレビCMにも拡がっています。このCMは、アニメーション形式で制作され、高校生と水族館の生き物たちとの魔法のような出会いを描いています。物語は、通学中の女子高校生が主人公で、彼女の周りに突然シャチや色とりどりの魚たちが現れる様子が描かれています。これらの海の生き物たちは、まるで空を飛ぶかのように街中を自由に泳ぎ、現実の世界と幻想的な海の世界が融合する瞬間を創り出しています。
このCMのテーマソングは、人気アーティストのmiletが書き下ろしたもので、映像の魔法的な雰囲気を一層引き立てています。

オープン当日は、この日のために特別にデザインされた新聞広告が掲出され、「スマスイは、スマシーへ。」というメッセージと共に、水族館の新たな章の始まりを告げました。
「神戸須磨シーワールド」のリブランディングと新しいプロモーション戦略の背後には、クリエイティブディレクターの大内健太郎氏がいます。大内氏は、このプロジェクトにおいて、単に施設のスペックを前面に押し出すのではなく、須磨の街と海の生き物たち、特にシャチとの出会いを描くことで、新しい水族館のスケールと世界観を表現することを目指しました。「長年親しまれてきた水族館が生まれ変わるにあたり、大きな期待感を醸成することが目的でした。須磨の街とシャチとの出会いの物語を複合的なコミュニケーションで展開することで、スケールの大きい世界観を表現しました」と大内氏は述べています。